某監査の、ぶらり避暑の旅(前編) †
あついー。
「暑いですねぇ」
ちーちゃん、なんか涼しくなる方法ないー? このままじゃ干からびちゃうー。
「八千代ちゃんによると、北海道は涼しいみたいです」
よし行くか。
「即決ですか」
……予算大丈夫かな?
登場人物(と役柄) †
- 華村天稀(本人)
- いつもの電子妖精。少女に見えるが性別はない、と本人は言い張ってる。
- 蓬莱ちさと(カート?)
- ノーテンキ死神。電子妖精化できるが、エネルギーの問題で時間制限がある。
- 白川みそら(?)
- ご存じ、シモネタ魔法使い。一応、喫茶の正マスターでもある。
なぜか今回沸いて出た。道中では下ネタ封印で。
- 柿崎美月(きりかさん代理?)
- シモネタ魔法使いのお目付役。ただしからかわれることの方が多い。
- 愛媛蜜柑(?)
- エンジニアっつーかマッドオタクの少女。機械を見ると分解せずにはいられない。
※この話はフィクションのような気がします。
Aug. 8 11:30, at home †
……んでは、当日よろしくー(がちゃ)
「今から予約ですかぁ?」
今終わったとこ。宿3件(5日分)と帰路、ひとつでもダメなら行くのやめようと思ったのに、全部OKでやんの
つーわけでまずは函館へ。東京から新幹線はやてに乗って八戸まで、そっから特急に乗り換えて青函トンネルをくぐるよん。
遅めの昼飯は、仙台名物?の牛タン弁当なり〜。ヒモを引っ張ると化学反応が弁当を温めてくれるというスグレモノ(?)
「天稀さん、わたしも食べたいですぅ」
死神がどうやって食べるんだよ。
Aug. 8 20:10, at Hakodate †
とうちゃく〜。いやー長かった。東京から6時間半の旅路だ。
「すっかり夜ですねぇ」
「今なら絶好の夜景が見れるわよ」
……みそら。何故いる?
「きりかの電話口で、おもしろそうな事してるのを聞いたから」
たしかに函館着く直前に話したが。それでワープで飛んで来たってか?
「そういうこと♪」
……百歩譲って、ついてくるのはかまわんが、道中は下ネタ禁止な。
「えー、何よそれ。つまんないじゃない」
できないなら今すぐ帰れ。ていうか追い返す。
「んもう、しょうがないわね」
はいはい、お呼びでない下ネタ少女もお待ちかね、これが函館の夜景だ。
「涼しいですねぇ」
それは天稀のセリフー。
「あんたらねぇ、もっとちゃんと夜景を見なさいよ。何しにここ来たのよ」
避暑だが?
「……観光じゃないの?」
いや避暑だが?
「じゃああたしが、あんたたちの分まで観光してあげるわよ」
いってらっしゃい〜。ちなみに柵はあっちの人込みの向こうな。
「うー、夜景はきれいだったけど、つーかーれーたー」
だろうな。だから天稀は近づかなかった。
「ホテルどこよー? もう歩けないー」
……予約は一人分しか入れてないから、みそは野宿じゃね?
「あ、それなら大丈夫。新しい魔法を教わってきたから」
へぇ、どんな?
「"ステルス"」
……そういや、さっきロープウェイで金払ってなさそうに見えたが。
「もちろん使ったわよ」
無賃乗車用スキルか。
Aug. 9 8:00, at Hakodate †
『♪〜(ラジオ体操の最初で流れる曲のイントロ)』
……あれ、みそら? 早起きだねえ……Zzzzzz
「♪新しいパパが来た 待望のパパだ」
待て、何だそのツッコミがいのある替え歌は。
※そういえば、みそらのパパって……?
「五稜郭〜」
の、外にある新タワーだな、ここは。高度不足で眺めの悪かった前タワーと違って、ここのは目の前の五稜郭がきれいに一望できる。
「へぇ、あいつらちゃんと仕事したのね。感心、感心」
え、なにみそ、ここの工事担当と知り合い?
朝飯というか、朝昼兼用というか。飯はここ。
「ラッキーピエロ? 有名なんですか?」
旭川からのお薦めだ。有名なんだろう。
「おいしいの?」
ん、美味いよ。もぐもぐ。
赤レンガ〜
「こっちは裏口よ?」
あら?
「アンパンマンさんですねぇ」
「バイキンマンもいるわね」
ストーンアクセ屋かな、ここは。
「ここがガラス工芸館」
へぇ、近くにあったのか。
「製作体験できるそうですよ」
不器用なんでパスで。
ハリストス教会*1。ハリストスってのはロシア語でキリストのことらしい。見た目だけならハーフで金髪のみそが一番馴染むのだが……
「何よ、その『性格ですべてがぶち壊し』とでも言いたげな目は」
言いたいことが分かるあたり、多少の自覚はあるんだな。
教会を抜けると、いい石畳。こういうとこ散策するのは、なかなかいい気分。
旧公会堂。明治のモダン建築かな。
旧イギリス領事館。今でもイングリッシュな品物の数々を売ってる。
というわけで、ぐるっと回って函館駅。
「ちょっと、何でこんなにドタバタなのよ。まだ1時半じゃない」
えーだって、最初の二か所以外、時間かけてじっくり見ようと思ってた場所じゃないし。むしろ次に時間使いたいから。
「次ってどこよ?」
洞爺。
「洞爺って、サミットもあった、あそこ?」
あったなぁ、サミット。
Aug. 9 17:00, at Touya, Mt.Usu †
うーん、長万部で思ったよりも時間食ってしまった。
「洞爺に急ぐって言って函館飛ばして来たくせに、何であんな見所のないとこ寄ってきたのよ」
知り合いが住んでるんでね。久方ぶりに顔出そうと思って。特に見所はないので詳細は省略。
というわけで、西山火口散策路でござい。
「湖は?」
あっち。
「行かないの?」
湖行くのは明日かな。ここは今回の旅の主目的のひとつで、湖はノーカンなので、今日はこっち優先。
さて、この遊歩道は速度制限50キロなので、超過しないよう各自気をつけるように。
「どうやったら徒歩でそんな速度が出せるのよ」
みそなら韋駄天の魔法でも持ってそうだと思うのだが。
うっすらと煙も噴いてて、ほのかに硫黄の香り。
家、車、高架。
「ボロボロじゃないの」
局所的には震度7以上の被害だろうね。
小山のてっぺんはアスファルトの小片。
「これ、登れるの?」
前にいた三人組は登ってたが……危ないからやめとけ?
ひび割れて断層まで剥き出しの道路で、散策路おしまい。
「おかえりなさ〜い」
って、ちーちゃん? もしかして見てない?
「死者さんの案内で地獄にもよく行くんですが、どこもこんな感じなので、おもしろくないんですよぅ」
そりゃさすがに、地獄と比べられたら分が悪かろ。
Aug. 10 8:50, at Touya Lake †
はい、今日はみそがお待ち兼ねの洞爺湖だ。
「温泉行くわよ温泉」
待った。10時20分のバスで駅に戻るから、ここでの活動時間はだいたい1時間とちょっとしかないぞ。
「だからなんでそんな強行軍なのよ」
……あれ、なんで遊覧船?
「時間ないって言ったの誰よ?」
まぁ確かに、泊まり客じゃなくても入れるとこを探して駆け込む時間は、ないかもしれないが。
「天稀さーん、ここからの眺めが気持ちいいですよー」
ほほう、どれどれ?
あんなとこにも家が。どんなヤツが住んでんだろ。
「あれ、住宅じゃなくて管理小屋じゃないの?」
いいなぁ、天稀も泳ごうかなぁ。
「水着あるわよ」
時間がありません。てかスク水かよ。
上陸どころか、洞爺湖の水を採取する時間もない。残念。
こんな島に住んでみたい。
というわけで、あっという間に一周。
「おや、あの人だかりは何でしょう?」
「なんか、心霊写真がどうのこうの、って騒いでるわよ」
そういや、船に乗る時に写真を勝手に撮られたが……
「ああっ、お客さん! ちょっと見ておくれよ! あんたの写真にだけ、女の子のユーレイの写真が写っちまったんだよ!」
落ち着け肖像権侵害。写ってるのは写真じゃなくて霊だろ。って二人?
「美空さんも幽霊扱いされてるみたいですねぇ」
「へぇ、"ステルス"って写真には写るのね」
そーいうオチかい。
※一応コイツも撮りました。できたてほやほや?
Aug. 10 14:00, at ShinChitose Airport †
陸路でここまで着たのは初めてだな。
「ねえ、何でこんなところに来たのよ? 帰るのはまだなんでしょ?」
あぁ、それはね。
「あ、いたいた」
来たか。よく喫茶で変なモンぶちまけてるから、マスターのおまえは知ってると思うが。
「……誰だっけ?」
おまえは本当に喫茶のマスターなのか?
つわけで自己紹介よろ。
「えー、メンドイ」
いいからやれ。
「だってさ、みんなのアイドル愛媛みかん様を知らないなんてさ」
いつのまにアイドルになったんだか。
「大昔からアイドルだったじゃないの」
いつの昔だよ。カンブリア期か?
「残念ながらそこまで昔じゃない」
「あのさあ」
どうしたみそ?
「ここに来たのはコレと合流するため?」
それもあるが、もう一人。航空ショーの影響で飛行機が遅れてるらしいが、そろそろ来ると……あ、きたきた。
「美空っ!!」
「あれ、美月?」
「あれ、じゃないわよ! 何いきなり家出なんてしてるのよ!?」
「家出じゃないわよ、ちゃんと手紙置いていったじゃない『ちょっと出掛けて来ます、五泊ほど』って」
「そんなんで納得するかあ!」
まぁまぁ美月ちゃん。こいつが突拍子もないのはいつものことだし。って美空、五泊って事はあれか、天稀の全行程についてこようとしたのか?
「ほんとにすみません、大家さん」
いやいや大丈夫よ。楽しかったし、それなりに。
「でもですね、もーちょっと美空の暴走を止めてくれても、いいんじゃないでしょうか。大家なんだし」
うへぇ、やぶへびだな。つか美月ちゃん、バイタリティのない天稀に、この歩くシモネタ製造機をどうこうするなんて、できるわけないじゃないか。
「自慢げに言わないでくださいっ」
「美月、そんなにカリカリしてると老けるよ?」
「誰のせいでカリカリしてると思ってんのよ!?」
……みそ、もう帰りなさい。このままだと、美月ちゃんの脳の血管がプッツンしたりした日には、旅行どころじゃなくなるぞ。
「えー」
「えー、じゃない! 喫茶のほうだって、いつまでも留守にしてちゃあダメじゃないの!」
「大丈夫よ、あそこはあたしか大家がどっちかいれば何とかなるから」
「大家さんはここにいるじゃないのよ!」
「あ。」
いやそんな、今更気づいたみたいな態度を取られても。
「しょうがない、帰ろっか」
ん、またなー。
「あぁそうそう。函館で預けた荷物、返して」
荷物? そんなの預かったっけ?
「このおみやげのことですかぁ?」
「そうそうそれ。ありがとちーちゃん♪」
なにそれ?
「美月におみやげ。はい」
「え、わたしに?」
「開けてみて」
「う、うん」
……あー、なんかすっげーイヤな予感がする。
「…………なっ!?」
「よくできてるでしょ?」
的中かぁ……まさかそれ、ガラス工芸館で?
「頑張って作ってみた」
「あっは、よくできてるねぇ」
「でしょ♪」
うあー、ヘンタイ同士で意気投合しやがった。
「「ヘンタイとは失礼ね」」
ガラス細工でイチモツ作って土産にするような奴は文句なしでヘンタイだっつーの。それに意気投合する奴もな。
だいたい、道中はシモネタ禁止と言ったはず。
「これから帰るんだから、もう道中じゃないわよ」
そもそも、よく工芸館のヒト達が協力したよな。
「全然。みんな固まっちゃってさ、大変だったのよ」
そりゃそうか。
「みーそーらー」
「美月、気に入ってくれた?」
「気に入るかぁ!」
「それ、そらとだいたい同じ大きさだから」
「ふぇ!?」
「そらだと思って、大事にしてね」
ムチャクチャ言うなぁ、おい。言っておくが、それ喫茶に飾ったりしてくれるなよ? せっかく(飛鳥が)大掃除してスッキリしたんだから。
「これは美月にあげるから大丈夫」
ならいっか。
「それじゃ、監査さん、みかんちゃん、また喫茶で」
うぃ。
「またねー」
「あ、こら美空! 待ちなさい! これどうしてくれるのよ!」
……今更だが、ヘンタイな友人を持つと大変だなぁ、美月ちゃん。
「まったくよねぇ」
斗的君や磨智君にも言えそうなのだが?
「そうなの? 二人も大変だねぇ」
おまえのせいだ、おまえの。