有限会社/旅行記/200807津山

[1496] ぶらり途中下車の一人旅(2/3)

 さおりん、今晩泊めて♪
「はい?」
 (ひそひそ)泊めてくれないとバラす。
「!? なっ、なっ……!」

○登場人物(役柄)

・華村天稀(本人)
 いつもの電子妖精。少女に見えるが性別はない、と本人は言い張ってる。
 当たり前だが一人旅の主役。

・文月沙織→飯綱甲介(MONDO代理)
 文庫のアイドル、ナノマシン仕掛けの美少女。元の姿はロボトラ少年。
 今回、天稀に無理やり押しかけられ、色々脅されてやらされて大迷惑。

・戸増頼香(かわねぎ代理)
 宇宙に名だたる(らしい)銀河連合の最年少少女士官。

・ファンシー・リリー(南文堂代理)
 最近影が薄い(=作品が出ない)、正義の魔法少女。でも性格がぶっとんでいて、彼女の正義は実にアメリカン。

※この話はフィクションです。一応フィクションです。

○First day 21:30, at Amasu city.

 つーわけで、飯綱邸にやってまいりましたイェーイ!
 あ、夕食後に、キャンペーンなのか若干安めのマッサージがあったので、夕実ちゃんを除く三人ですっきりしてきたことを付け加えておこう。
「この年でマッサージが要るほど凝ってるというのはどうかと……」
 それだけハードワークなんでしょ、まぬけ獣退治ってのは。
「天稀さんは?」
 ……さあ。何で出来てるのか、よくわからんからな、電子妖精の身体は。
 そんなことより、到着かな? ここが飯綱邸?
「はい、ってホントに泊まるんですか?」
 うん。って人の気配がしないんだが。もしかして、ご両親は旅行中?
「いえ、ここは別宅なんです。もともと店の倉庫にしてた場所で」
 Σ( ̄□ ̄;)別宅だとぅ!? さおりん、実は金持ちなのか!?

※この話はフィクションです。登場する飯綱邸は、実在の飯綱邸とは関係ありません。

 広い部屋だね。お、プチパペットだ。おひさしぶり〜。
(※プチパペットが何のことかわからない人は、広島オフのレポートを参照のこと。)
 っとおや、なかなかおっきなプラズマディスプレイ。
「はい、どうぞ」
 ん、ありがと。うん、夏にはやっぱアイスキャンディだよね。
「あんた大阪人か」
 こんな大阪弁しゃべらへん大阪人おらんわ。
 さて、とっても何か聞きたそうな顔。遠慮なくどうぞ。
「うん、その、」
 おや、へぇ。『グー』ってこういう芸なのか。初めて見た。
「知らなかったんですか?」
 うん、テレビ見る習慣ってなくてね。あれ、ジャパネットたかたって芸人だったの?
「"ジャパネット"じゃなくて"ジャワネット"ですよ」
 シャレかぃ。会社の方はどう思ってるんだろ。
「宣伝になる、って喜んでるのでは?」
 たしかに『ジャパネットおかま(悪徳業者らしい)』の存在よりは有り難いわな。
「って、話をそらすな! 本題に入れないだろ!」
 あぁ、ごめんごめん。ついネ。つか男言葉の激しいさおりんも萌えダネ♪
「……まさかわざとですか」
 いやいやちゃうちゃう。天稀はエブリタイム・ゴーイングマイウェイだよん。
「なお悪い!」

 ……なるほど、こうやって元に戻るのか。
「おい、見せもんじゃないんだぞ」
 まぁとにかく、ウチらはバラす気はないんで、安心していいよ。
「本当だろうな?」
 ホントホント、だって下手にバラすよりからかった方が面白そうだし。
「おい」
 あ、そうだ。ほのかさんがいるところで飛びついて『できちゃったみたいなの……責任取ってね』とかどうよ。電子妖精は見た目少女だから、真に受けられたら修羅場だね♪
「おいっ!?」
 というわけで、実行されたくなかったら、明日のプランを立案しなさい。ぶっちゃけやることなくてヒマでヒマで。
「くっ――なんて身勝手なヤツ!」
 いやーそれほどでも。
「褒めてねえ!」

○Second day 7:00, at Kosuke's room in second house.

 ……ふぁ。おはよう?
「やっと起きたか、このねぼすけめ」
 どこだここ?
「人の家に無理やり泊まっておいて、言うことはそれか?」
 ……どうやら夢の中のようだ。寝直そう。おやすみ。
「おいおいこらこら」

 うー、水浴びしてもまだ眠い。
「早く出ろー、もう行くぞー」
 うーぃ。で、どこ連れてってくれるんー?
「昨日話さなかったか?」
 ……忘れた。
「なるほど、だから馬鹿監査って呼ばれてるのか」
 馬鹿とゆーな馬鹿と。
「おまえが言い出したんだろうが、『古墳に行ってみたい』って」
 あぁ、そういえば。でも遠くから見るだけのはツマランから却下よ?
「だから『入れる古墳』に行くんだよ」
 入れる古墳?
「明日香村の石舞台古墳」
 石舞台、ってーともしかして、岩が剥き出しのアレ?
「正解」

○Second day 11:00, at Asuka Village.

 明日香村って、随分前にNHKの朝ドラに出たとこだよね。
「そうだっけ?」
 和菓子職人の出身地、じゃなかったかな確か。
 へぇー、来るのは初めてだなぁ。のどかでいいねぇ。
「そこのレンタサイクルで自転車が借りれるぞ」

「明日香村は遺跡の宝庫だからな。のんびりしてると日が暮れるから、適当に回るぞ」
 ふぇーい。うーん、いい具合にのどかだ。これでこう、途中に冷たい沸き水があったりすると、最高なんだけど。
「醸造の産業廃水ならあるけど」
 それは微妙だ。手をつけていいのやら。
「で、まずはこれ。猿岩とか言うらしい」
 猿っていうか、なんかアホの顔に見えるね。

※飛鳥時代の外交官(使節)の顔らしい。現代ではそれを猿呼ばわり(笑)

「次、鬼の雪隠(せっちん)」
 雪隠ってトイレの事だっけ?
「ああ」
 んじゃ、こーちゃん。試しに使ってみて。
「おい!」
 だってほら、電子妖精は外形は少女だから、立ちションはできないし。
「そういう問題じゃないだろ!」

※遺跡に粗相してはいけません。よい子も悪い子もやっちゃダメです。

「こっちは鬼の洗濯板」
 ペチャパイには見えない。
「そういう意味じゃないっての」

※もともとは一つの遺跡(石柩)だったものが、鬼の悪戯(=天候など)により壊れて、残った一部ずつが『雪隠』と『洗濯板』になったらしい。

「あったあった。これが亀石」
 これが両前足でこれが顔?
「たぶんな」
 へぇ、なかなかひょうきんな顔だね。で、秘密基地に入るスイッチは何処?
「おいおい、遺跡だぞ? 人が集まるところに秘密基地の入り口作る馬鹿はいないって」
 言われてみれば、筋肉ダルマくらいだな、そんな意味不明なもの作るのは。
「筋肉ダルマって、おまえあいつらに遭ったのか?」
 不幸にも遭遇したことがあってねー。っと、群生生物の話題はこの辺にしとこ。『ウワサをすれば何とやら』って言うし。
「……そうだな」

 機械仕掛けの神様がどこかで「チッ」とか言ったかもしれないが、天稀はそんなこと感知しない。

「よいしょっと」
 ? ここに何が?
「この石。何だと思う?」
 なにこれ? なんか植木氏の【夢使い】にでも出てきそうな妖怪みたいに見える。
「……(何それ?)」
 ……それとも、古い神様か何か?
「こっちから見れば分かるぞ」
 どれどれ……あれ、もしかしてこれ。
「そうそう」
 コックリさん?
「……それは新手のボケか?」

※思わせ振りな位置、思わせ振りな向きで、遺跡でもなんでもないタヌキの置物が置いてありました。石となってもなお人を化かす妖怪、と思うと貫禄あるように見えるかも?

「さて、ここが石舞台古墳――あれ?」
 ? どったの?
「入場料?」
 300円か。まぁそんなもんじゃない? 遺跡なんだし。
「昔は要らなかったと思ったんだけど……」
 そういう牧歌的なことじゃあ、維持できなくなってきたんだろうねぇ。何か保存しようと思ったら、一番障害になるのは人間だし。
「それは穿ち過ぎじゃないのか?」
 でもほら、白塁高校元祖ロボTry部の部員たちは、あの筋肉ダルマの侵食に耐え切れなくて、正気を保存できなかったわけで。
「……なんか、納得できるけど、納得できないっ」

 あー涼しくて気持ちいい。
「そうだな。玄室だもんな」
 いいなぁ、住むならこういう涼しいとこだよね。
「……ここ墓だぞ?」
 あれ? 光が差してる。
「え? ホントだ。何で?」
 手抜き工事の賜物かぁ……
「いやそれは違うだろ。ここだってもともとは土かぶってたんだし」

 さて、これでメインディッシュは完了かな。
「次は何処回る?」
 んー、近いのはこの辺?
「魔羅石?」
 ……それはやめよう、なんとなく。
「普通に近いのはこっちだな」
 酒船石? 古代の醸造道具か何かかな?
「うーん、パンフには詳しいことは書いてないな」
 木花咲耶姫と関連あるかもしれぬ。見てみよう。

※木花咲耶姫:天皇家の祖先で、日本で初めて日本酒を作った神様(酒全般なら、ヤマタノオロチが飲んだ果実酒が先らしい)。

 なんかしょぼいな。しかも欠けてるし。これをどうやって酒造に使うのやら。
「……庭園の置物のひとつだった、という説が有力だ。だって」
 木花姫ぜんぜん関係ないぢゃんっ! 騙されたっ!
「で、見学料300円らしいんだが」
 ちょ、え、こんなしょぼいのでΣ( ̄□ ̄;)!?

※石舞台とか他の近隣遺跡のボリュームと比べるとイマイチ納得しがたい金額……任意寄付に近いものだったのかも。

「さて、次はこの辺からちょっと登山」
 ぬぐっ。自転車ならある程度なんとかなるが、こっから徒歩かよ。
「はいはい、ちょっとだけだからきりきり歩け」
 あついーだるいー疲れたー。
「早っ。もうばてたのかよ。ほら着いたぞ」
 うわぉ。すずしー。
「ああ、風が気持ちいいな」
 うわ熱風きたー。
「下から吹き上がる風は熱いのか」

 さて、最後にふさわしいのはいずこ?
「高松塚古墳かな」
 あの魔神が封印されていた場所か。
「なんだそりゃ?」
 あれ、知らない? ふしぎ遊戯。
「知らない」

※四神に宿星と言えばふしぎ遊戯。の第二部、高松塚の朱雀の壁画が壊れたせいで魔神の封印が解けて、主人公たちが再び……というお話でした。

 むぅ、遺跡には入るどころか、覗くこともできないのか。ていうか厳重に覆われてて、とても見学どころじゃないネ。
「でもかわりに、こっちで復元図や資料の展示してるぞ」
 ふたたび入場料300円すか。
「でも酒船石よりは見ごたえあるんじゃないか?」
 あれはなんつーか、うん、エロいな。

※エロい:ここでは『どうしようもない』の意。
※実は石櫃は解体修復中だったらしい。入ろうにも撤去中で存在しなかったというオチ。

 ふぁー、涼しい。これだけでも300円の価値はあるね。
「おいおい」
 冗談はさておき、やっぱ朱雀のとこは壊れて跡形もないのか。
「でも他はきれいに残ってたみたいだな。へぇ、星も描かれてたのか」
 たまほめー!
「わっ、おい何だよいきなり」
 いやー、星見たら懐かしくなった。あの純愛っぷりが何ともいいよね。
「そう言われたって、知らないものは知らないし」

※たまほめ(鬼宿)とはふしぎ遊戯で主人公の恋人です。

「奥では調べ物もできるらしいな」
 どれどれ? ……うわ、なんて古いマシン。ソフト(ページ?)製作者も考えて作れよなぁ、性能しょぼすぎて動画がコマ落ちしてるやん。
「そこに目が行くのかよ」
 あーほら、職業柄つい、ね。
「まぁ、使ってられないのは確かだけど。本もいっぱい置いてあるけど、カギがかかってて見れないな」
 呼べば見せてくれるんじゃない?
「そこまでして見たくもないし」
 だよねー。ロボトラ少年が興味を示すと言えば、最古の傀儡人形くらいか。
「なんでそうなる」

 さて、駅前の喫茶まで戻ってきたわけだが。
「おつかれさまー……あ゛ー疲れた」
 暑かったしねぇ。まぁでも、おかげさまで充実した観光になりました。
「無理やり脅してやらせておいて、よく言う」
 なんだよぅ、礼は礼には違いないんだぜ。
 まぁそれはそうとして今後の予定なんだけど。
「ええと六時頃に集合だから、」
 宴会?
「あー、まあ、宴会と言えば宴会なんじゃないか? ただまだ時間あるぞ」
 よし、じゃあ風呂いこ。熱い中走り回ったから汗だくだ。
「そうだな、んじゃ……浴場、亀石の南あたりだな」
 遠っ!

※さっぱりしてきても駅に戻るとまた汗だく、では何の意味もなし。風呂はパスになりました。

○Second day 18:30, at Yotsubashi subway sta.

 結局、そこそこ余った時間はパーツ屋で潰すとかいうオチ。
「いいじゃん、面白かったし」
 まぁ余興にはなったけど、新型パーツにはしゃぎ過ぎ。
「いや、普通そこは気になるって。おまえだって、新作ゲームが出たらチェックするだろ?」
 やんないなぁ、最近のゲームには魅力を感じないし(但し商業作品に限る)。
「同人ゲームは?」
 それは漁るかも。
「ほら見ろ――お、来た来た。ライカちゃんひさしぶ」
(かちゃっ)
 うひゃ!?
「うわ、何て早い逃げ足……じゃなくて、何で銃!?」
「下がって甲介さん! 一見普通だけど、あれはマトモな生き物じゃない!」
 ちょ、フェイズガン仕舞え、天稀はオーライーターじゃないって! 電子妖精ってオーラの固まりだから気配は似てるのかもしれないけど!
「悪い奴はみんな決まってそう言うんだよ!」
 決めつけないでちったぁ話聞けよ!

※天稀はフェイズガンとか言ってるけど、正式にはオーラフェイザーとか言ったような気がする。

「……ホントにオーライーターじゃなさそうだな」
 確認だか手が滑ったんだか知らないが、フツーそれでヒトの手撃ち抜くかぁ? 人間相手だったら大惨事だぜ。
「悪かったよ。でもそのおかげで確信したんだし」
 もちっと穏便な方法にしてほしかったよ。再生はすぐだけど痛みは結構後まで引くし。
「ていうか、ホントに人間じゃなかったんだな」
 電子妖精に、ナノマシン少女に、(元大学生の)宇宙軍最年少少女士官。こーちゃん、今ここにまともな人間は一人もいないぜ。
「う。」
「それは確かに……」
 で、最後の一人は?
「ああそれなら……」
「(決めゼリフは殆ど聞き飛ばしました)ファンシー・リリー! 地下レストラン街の香ばしい匂いに呼ばれて参上です!(ぐぅぅぅぅぅ)」
「…………あれがそう」
 ……見なかったことにしよう。
「無理じゃないか?」
 何とかなるって、現に今まで聞かなかったことにしてたわけだし。
「堂々とヒトを無視する相談とは、こざかしいにも程があるわよ、軍事系悪徳魔法少女ふぃらでる・エルドリッジ(鈴忌さん命名?)!」
「何その名前?」
 幻聴、幻聴。いないもの相手にしてたら病院逝きだよ、こーちゃん。
「なにげに毒々しい発言だな……」
「……いいかげん人のこと無視してんじゃないわよ! 白々しいのよ!」
 いだっ! なんだなんだ、幻影が天稀の後頭部に杖を突き刺してきたぞ?
「いや幻影じゃないし」
「いいかげん無視するのは無理なんじゃないのか?」
 あーはいはい、わかったわかった。気が進まないが仕方がない。
 涙目の嬢ちゃん、とりあえず言いたいことは三つ。
「何よ?」
 まず天稀は悪徳でも魔法少女でもないんで。なんぼなんでも893と一緒にされたら怒るぞ。
「な、魔法少女が893だって言うの!? 失礼はどっちよ!」
 おまえさんを見てると『魔法少女=やくざ』も限りなく真かもしれないけど、そっちじゃなくて。893ってのは悪徳の方ね。
 次。お供の犬(?)はどうした?
「ウッちゃんなら、以前連れて来たら店員がごねて料理出さなかったから、仕方ないから今日は留守番よ」
 仕方ない……のか、それは? まぁ行為自体は正解の気がするけど。
 で最後。何しに来たの?
「悪を倒しに来たに決まってるじゃない」
 ……じゃあ、おまいさんはお好み焼き要らないね?
「要るに決まってるでしょう!」
 でも、暴れる人に料理は出ないよ?
「…………」
 飯が食いたいなら休戦だな。
「……か、勘違いしないでよね! お好み焼きが食べたいからじゃなくて、あんたがどーしても勘弁して欲しいって顔してるから、仕方なく休戦に応じてあげるんだからっ!」
 …………ツンデレのつもりか?

 さて、こーちゃん。いったいどういう経緯でコレ(リリー)と知り合ったの?
「コレって言うな!(もぐもぐ)失礼ね!(むしゃむしゃ)」
 口の中が空じゃない状態での苦情は、見苦しいのでお断りします。
「いや、話せば長いんだけど、ちょっと色々と」
 なるほど、色々か……
「それより、店中の視線が集まってないか?」
 魔法少女と少女士官の容姿が浮いてるんじゃない? もしくは、抱えるほどの華を携えてるこーちゃんに対する、嫉妬の視線とか。
「……どっちかというと同情とやじ馬根性を感じるんだけど、視線から」
「まぁ、気にしなければいいんだ。野生の原生生物か何かだと思えば」
 ここの原生生物は、死ぬ程暑苦しくて手ごわいぞ。煮ても焼いても撃っても斬っても死なないし。もとい死ななかったし。
「それって、もしかして――」
 こーちゃん、出くわしたくなかったら名前口にしちゃ駄目。
「う、ごめん」
「そんな危険な存在なら、話題にしなければいいじゃないか」
 あぁ、ごもっともなんだけど、つい。
 ところで、何でまたお好み焼き?
「あぁ、俺が頼んだ。せっかく久々に地きゅ――いや大阪に来るんだから、大阪らしい食べ物が食べたいってね」
 なるほどねぇ。……でも全国チェーンなんだけどな、この店。
「?」
 んあ、こいつイカが入ってて、天稀には食べれないなーって。そんだけ。

※天稀はエビ・イカ・タコ・きのこ類と苦手な食べ物が多い。食の好き嫌いの多さは青秋桜一かも。

 ふぅ、満腹。ごちそうさま。
「言っておくけどワリカンだぞ」
 そういう意味じゃないんだが。ていうか小学生にまでワリカンさせて、大丈夫なん?
「ちゃんと持ち合わせあるから大丈夫」
 本人がそう言うならいいけど。
 さて、血の気も回復してきたことだし……今晩どうしようか。
「また泊めろって言うんじゃないだろうな?」
 いや、今晩はいいや。明日の行き先ちと遠いから、甘水からじゃ時間が足らないし。
「それじゃあ今から宿探し?」
 そうなるねぇ。ま、観光街のシーズンまっさかりならともかく、ここで宿がないってこともないでせう。
 あとの問題は……こいつか。

「さて、食べ終わったところで、悪徳魔法少女エルドリッジ! ってあら?」
「……天稀さんなら、もう行っちゃったよ。見事な逃げ足で」
「なんですって!? どっちに!?」
「梅田に行くとか言ってたぞ」
「くぅ、この程度でこのファンシー・リリーを出し抜いたと思ったら大間違いよ! 待ちなさぁーい!!」

※……南文堂さんは色々といい人なんだけど、なんかキャラの方はぶっ飛んでますね。いろんな意味で。勝手に出演願っておきながら何ですけど。

「……行っちゃった」
「ところで、二人から代金もらってないな」
「ああ、天稀さんは『あとで振り込みで払う』って言ってたな」
「リリーってやつも払ってないぞ?」
「天稀さんにまとめて出してもらおう」
「それならいっか。じゃあ甲介さん、この場はお支払いよろしく」
「おう――あ、しまった。パーツ屋で使い過ぎてお金が足らない」
「……おい」

 ファンシー・リリーを出し抜いて逃亡を図った、エルドリッジこと華村天稀。果たして無事に逃げ切ることができるのか? ついでに今晩の宿は見つかるのか?
 抜き差しならないところで後編に続く。


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Last-modified: 2009-08-16 (日) 08:24:07 (5384d)