有限会社/旅行記/200807津山

[1457] ぶらり途中下車の一人旅(1/3)

 前々日。
「ナンバに朝九時? そりゃ夜行コースじゃ……」
「うへ、バスもうないやん。こりゃ寝台か?」
「お、始発に乗れば新幹線でも何とかなるんだな」

 前日。
「ぬー、やっぱ寝台に飛び込んだ方が安全そう……え゛、三月のダイヤ改正で運行終わったぁ? うー、前日から向かって一泊というのはさすがに……五時起きか。起きれるか不安だな」

 当日。
「案の定、寝坊したぁ!」

 ……というわけで、予想通りな事態になりつつ、珍道中の始まり始まり。

○登場人物(と役柄)

・華村天稀(本人)
 いつもの電子妖精。傍若無人で無計画で気まぐれ、知識は役立たずでケンカはからっきし。
 当たり前だが一人旅の主役。

・文月沙織(MONDO代理)
 ご存じ、ナノマシン製(?)ロボトラ少女。<s>問題児の取り扱い</s>引率なども長けてる様子。
(参考:http://ts.novels.jp/novel/robot_triathlon/title.htm

・白瀬美奈子(南文堂代理)
 噂の悪の魔法少女。中学生なのだが妙に生活能力に長けており、達観もしている苦労人。
(参考:http://ts.novels.jp/novel/200104/09010648/title.htm

・伊達愛美(よっすぃ〜代理)
 知る人ぞ知る、ご町内の平和を守る変身ヒーロー。まぬけ獣退治は激務なのか、肩凝りが激しい。
(参考:http://ts.novels.jp/novel/200109/21002626/gakuen_red_title.htm

・夕実(かもライン代理)
 たぶんあまり知られない、内陸奥地の村に住む精霊(地霊?)。土地を離れて大丈夫なのか?
(参考:http://ts.novels.jp/novel/200302/11172037/jyoyanokane.htm

○First day 11:00, at Namba subway sta. 2nd exit

 ふぅ、寝坊してどうなることかと思ったが、時間以外は無事到着っと。
 電話口だとさおりんがこのへんで迎えに来てくれるらしいんだが……あ、いたいた。
「天稀さーん、こっちですー」
 やほーさおりん、ひさしぶり〜♪
「きゃっ!?」
 んー、相変わらず柔らかくていい抱き心地。
「あ、あの天稀さん、皆さん上で待ってますからっ」

 いやー皆さん、遅れてスマヌ。見事に寝坊しちゃって。
「沙織さんからは『電子妖精は朝に弱い』って、聞いてはいましたけど」
「ずいぶん遅かったね」
 ところで、んーと美奈子ちゃんと愛美ちゃんはたしか知ってるが、最後のお嬢さんはえーと?
「初めまして。夕実と言いますが、お好きなようにお呼びください」
 夕実ちゃんね、よろしく。地霊なヒト、なのかな? 土地を離れちゃって大丈夫なん?
「少しくらいなら、問題ありませんよ。多分」

「……それで、いつしか見た演芸、歌舞伎でしたっけ、それをここで見れると聞いて、こうしてやってきちゃいました」
 なるほどねぇ……ん、このカレー辛いけど美味しい。ナンも美味しい
「これで千円しないなんて、お得ですね」
「キーマカレーとタイ米は、なかなか合うよ」
「こっちのデザートも美味しいですよ」
 うあ甘っ。直射日光を受けてたあの見た目からは想像できないな。
「美味しいけど、あまり多くは食べれないわね」
 いいね、このインドカリーバイキング。次ふらっと単身なんばに来た時はここで昼食べるかな。
「ふらっと独りで来るんですか?」
 将来は来ることがあるかもしれないよ?

 さていよいよ開幕か。座席について、イヤホンガイドを借りてっと。
「天稀さんは歌舞伎は初めてですか?」
 うん。企画の夕実ちゃんと、誘ってくれたさおりんに感謝だ。
「沙織さんについては、遅刻した天稀さんの分までチケット確保したことについてもですね」
 それについてはごめんなさい。まぁおかげで睡眠時間バッチリっぽくて、睡魔に邪魔されずじっくり見れそうなワケだけど。
「あ、そろそろ始まります」
 うーい。
「…………(うとうと)」
 ぉ? 愛美ちゃーん?
「…………ぐー」
 もしかして相当お疲れ?

○First day 19:00, at an izakaya

「皆様お疲れさまでした〜」
「「かんぱーいっ」」
 くぅー、この一杯が……と言いたいが全員未成年だな。少なくとも見た目は。
「未成年が居酒屋でくつろいでいいの?」
 愛美ちゃん、細かいことを気にしたら負けだぜ。
「でも今日の歌舞伎、面白かったですね♪」
 夕実ちゃんはご満悦?
「はい♪」
 そだねー、ウチにも勉強になりました。倒されたラスボスの退場が、大の字になって倒れてるところを四人掛かりでかつぎ上げて運び出すってのが笑った。御輿じゃないんだから。
「天稀さん、御輿は肩にかつぐものです。あれは胴上げに近いのでは?」
 そうかも? といっても投げてはいないけどね。
 あと思った。一場面で主役やったキャラが以降まったく出なかったり、今まで名前ひとつ出てこなかったキャラがクライマックスで主役になったりしたじゃん。そこらへん、あんまりキャラが重視されてない気がした。
 シナリオの立て方からして、主にキャラが主軸になる現代の創作とはだいぶ違うね。ドキュメンタリーに近いのかな。
「なるほど」
 そういえば、美奈子ちゃんはいずこに?
「家事があるとかで、帰っちゃいましたよ」
 そうなのかー、大変だなぁ。ところで家の事と言えば。
「何か忘れて来たんですか?」
 いやね、今晩の宿。来る前からさおりんに言われつつも、結局いまだに決めてないんで、さてどうしようかと思って。
「え、まだ決まってないんですか? 予約取っておいた方がいいって、三日前からあれほど」
 聞いてたけどねー。でもほら、天稀は臨機応変がモットーなんで。
「……行き当たりばったりの間違いじゃないの?」
 ぐはっ。ま、愛美ちゃん、なんて無遠慮な鋭いツッコミ……。
「でもどうするんですか? 私の村まで来るなら歓迎しますけど、でも遠いですよ?」
 謹んで辞退します、出れなくなりそうなんで。
 んで、だ。考えたのだが、さおりん。
「はい」
 今晩泊めて♪
「はい?」
 (ひそひそ)泊めてくれないとバラす。
「!? なっ、なっ……!」
「天稀さん、何をひそひそしてるんです?」
「怪しいなぁ」
 怪しくないよー。ただちょっと『昔あーんなことやこーんなことをした仲じゃないか』って、ちょっと愛をささやいてみただけだって。
「そ、そんなことした覚えはない! だいたい、そんなに昔から知り合いじゃないし!」
 うをう、なんて冷たいお言葉。ウチ泣いちゃうわ。しくしく。
「愛をささやかれたにしては、さおりんうろたえすぎじゃない?」
「きっとDVですよ」
「ああなるほど。ひどい人だ」
 何でそうなるΣ( ̄□ ̄;)

 ……というわけで、無理やり飯綱邸(さおりんの家)に泊まり込むことにした華村天稀。彼女の家でコイツはどんなドタバタをやらかすのか?
 といったところで中編に続く。


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Last-modified: 2009-08-16 (日) 08:23:44 (5383d)