青秋桜オフ第18回


登場人物

  • 電子妖精(某監査)
  • ろろみ(こうけい)
  • マリー(おもちばこ)
  • ジェーン(バレット)
  • 猫のん(猫野)

[1435] 平塚オフ会レポート

 オフ会レポートです。以下のエピソードはフィクションであり、現実に起こったことと……、ちょっとだけ、関係があります。

 JR平塚駅である。数日間の祭りのなか日であり、最高の混雑を予定していた駅舎も、早朝には通りすぎる人々がちらほらと見えるのみだった。
 そのただなか、柱のたもとでマリーは剣を大地に横たえて、静かに始まりの時を待っていた。
猫のん「おお、駅で座りこんでいるとは、ジベタリアンですなぁ」
 しゃべる猫がコンコースをとことこ歩いてきて、コメントを残していった。
マリー「それは違うのではないだろうか」
猫のん「じゃあ、その中村屋総本店は?」
 マリーはユニクロと中村屋総本店がタイアップした鎧を装備していた。このことに関しては、とりあえずノーコメントでやりすごした。
 ふたりがにらみ合ったところで、ホルスターに二丁拳銃を吊したジェーンが駅舎場のゲートをくぐってやってきた。
ジェーン「時間どおりにただいま参上!」
 あとから来た微風ろろみが、三人の戦士を見あげて言った。
ろろみ「ちがう次元世界の戦士が揃っているのですね……」
 中世の騎士、異次元のガンマン、ただの猫。
 そして最後に電子妖精が仮の姿――人間の女性として現れた。今日も車輪つきのキャリーバッグを曳っぱってきたけれど、新作かばんは持ってこなかったらしい。

 一同はマリーの先導のもと、カフェの前を通りすぎて祭りの会場へと向かった。道すがら、ろろみと電子妖精が同型の携帯電話を見せあいっこしていた。
電子妖精「五つの世界と通信するための電話を揃えたんだよ」
 さすがは「電子」と呼ばれる妖精だった。

 駅舎を出て街道を横切ったところが祭りの会場の入り口だ。ゲートでは、まだ朝が早かったからか、商人たちものんびりくつろぎながら露店の準備をしていた。猫のんが獣らしくこんがり揚がった鶏の唐揚げに目を奪われていたが、一同は気にとめなかった。

ろろみ「まぁ、きれい」
 この街の星祭りの飾りは、とても長い竹をアーケードに斜めに立て、そこにみこしのような、立体的な飾りを吊すというものだった。見あげながら、暑くなってきたのでかき氷を食べる面々。
 そこへパレードがやってきた。少女たちの鼓笛隊と、つづいてはバトントワリングが七夕飾りの下をくぐる。レオタードを着て宙返りの技を見せる年長の娘と、一所懸命その真似をしようとするおチビさんたちがかわいらしい。

猫のん「ひとりだけ男の子で、バトンの二丁使いがいるねぃ」
ろろみ「彼も心のなかでは、女の子たちの一員なのかもしれませんね」

 ふり返るとジェーンが一軒の大店の前で声を張りあげていた。
ジェーン「懐かしいな! ここは昔僕が働いていた店……の、分店なんだ」
 にこにこしながら店に入っていくジェーン。
ジェーン「ん、品揃えはいまいちだな」
という声が外まで聞こえてくる。マリーも店頭で、気に入った形の兜を品定めしはじめた。
マリー「……サンバイザーつきがいいな」

 見おろすと買い物客たちの足もとを縫って、買いもの袋をくわえた猫のんが店を出てくる。
電子妖精「なにを買ったんだい?」
猫のん「靴下なのさ。雨のなか歩いたら傷んでしまってねぇ」
ろろみ「ご存じでしょうか。ある有名なライトノベルに、クツシタという猫がいます。黒猫である彼は、足の先だけ毛が白いのでクツシタと呼ばれていたのですが……」

 一方電子妖精は向かいの、ひときわ豪華な七夕飾りを見つめていた。
ろろみ「五十年間、表彰連続一位の豪華飾りなんですね」
マリー「かちかち山に分福茶釜のタヌキがモーターで動くとは、手がこんでいるぞ」
 たしかに毎年あれだけの動く仕掛けを作ってしかも空中に飾る熱心さは、王者の名にふさわしいだろう。
 しかし電子妖精の視点は動物のハリボテよりも下を見ていた。チャンピオン連覇を勝ち取っている、その飾りのオーナーの店を見ているのだ……。○○カバン店。
ろろみ「ああいけない、妖精さんがカバンの魔性に魅入られてしまいました」

 店に入っていく電子妖精。固唾をのんで見守る一同。妖精は新しいカバンを……、抱えてこなかった。偉い。

 街はしだいに、たがいの袖が触れあうほどの混雑となってきた。ジェーンが「これを食べないだなんてありえナイナイ」と買った中国焼き餅(シャーピン)をほおばりつつ、アーケードを歩く一同。なぜかものを食わずにきょろきょろしている猫に、電子妖精が尋ねた。
電子妖精「どうしたんだい。なにか目当てのものがあるのかな」
猫のん「唐揚げややさんがいっぱい、いっぱいあるんだ……。いちばんおいしそうなのを選んで食べるんだ……。でも探せば探すほど、一番最初に見つけた唐揚げやさんがおいしかったんじゃないかって思えてきてさぁ!」
 食い物への執念が恐ろしい猫のために、マリーは道を替えて最初の入り口に戻ってくれた。道すがらの裏通りで、マリーが言う。
マリー「この店はだね、ふつうのフルーツ店に見えて、とてもいい品がそろえてあるんだ……。おい、猫くん?」
 猫のんは、フルーツ店の店先に(なぜか)並べてあった唐揚げの串焼き(二百円)を奪い取るようにほおばっていた。
猫のん「ほんとだ、すごい、最高級品だよぉ!」
(……結局、どこの店でも良かったのだな)
 ちなみに猫のんが探していたはずの「最初の店」には、電子妖精お勧めのスパゲッティー揚げが売っていたのだった。

[1436] 平塚オフ会レポート (2)

 近くの甘味処で昼食後、一同は大通りに沿って南下して、海へと向かった。理由は、夏だからだ。あとで「なんで行ったんだ」と問題になったんだけれどね。
 大通りだけに、道には街の重要施設が並んでいる。
マリー「見たまえ、これが商工会議所だ」
ろろみ「ご存じでしょうか。人気ライトノベル『狼と香辛料』には、商工会議所が重要な場面で出てきます。大航海時代の通商をよく表現する場所として、」
マリー「見たまえ、これがハローワーク(職業安定所)だ」
ろろみ「…………」
マリー「見たまえ。これが、税務署だ」
(マリーさんは、税務署によい思い出でもあるのでしょうか?)

ジェーン「あ、サーフィン屋にスケボー見っけ。乗ってみたい!」
電子妖精「スケボーは乗り物じゃない、おもちゃだよ。トイザらスで売っている」
猫のん「ええええっ! 信じられないっ!」

 などと雑談しながら歩いていると、道がふたつに分かれているところへと出た。ひとつはまっすぐに浜辺へ、もうひとつは曲がりくねって、うっそうと茂るジャングルへと消えていた。

 きみはどちらを選ぶ?   浜辺→1へ  ジャングル→2へ

1.浜辺
電子妖精「いやだ、海はいやだ、砂で埋まる、潮風で錆びる……。ガリガリガリ」
 壊れてしまった妖精を尻目に、一同は海岸に出て海を見わたした。天気がよければ幻のアオガ・アイランドが見えるとマリーが言ったが、その日は水平線に島はなかった。
 かわりに現れたのは、
裸族「ヨォ! ヨォ! ヨォ! ゲッラウト、ヘア!」
一同「ら、裸族だーっ!」

 旅の仲間は見る間にアメリカンっぽい裸族たちに囲まれてしまった。彼らは筋骨隆々とした褐色の肉体を見せつけながら、ネットをはさんでたがいにボールを打ちあった。
猫のん「裸族の伝統的格闘技法、美異血・爆霊威(ビーチ・バレー)! こんなスポーツがオリンピックの正式種目だなんて、すごい異世界だょ、ここって!」

2.ジャングル
 ジャングルをさまようなか、参加者たちは一本の立て札を見つけていた。立て札にはクイズが書いてあった。
「A.この林は飛んでくる砂を防ぐために、重要なはたらきをしているのじゃ まる」
ろろみ「『砂防林』。クイズの、答えですね……。問題はどこなのでしょう?」
 問題が書いてる立て札を探す、というのがここでの真のクイズなのかもしれない。一同は見回した。右も左も鬱蒼としたジャングル……。あっさりと、探すのを諦めた。
 突然、ジェーンが二丁拳銃を抜いてかまえた。
ジェーン「気をつけろ!」
マリー「まさか、敵なのか」
 ジェーンは筒先で地面を指した。地面には、あまり描写したくない形状の落とし物があった。
ジェーン「おそろしい……。まさにS○IT!」

 帰り道は暑かった。潮風のつぎに直射日光のダブルパンチにあった電子妖精が白煙をあげながらとぼとぼと歩いていく。他のものも手うちわで、日陰を求めながら駅まで帰るのだった。
マリー「水分補給が必要だな。こういうときにはいい場所がある」
 マリーの先導で、一同はひたすら駅ビルを登った。そこに待っていたのは――、
ジェーン「いぇいっ、無印良品だ!」
猫のん「な、なぜに!?」

 いや、たしかに涼しくて明るい店内、飲み物も豊富、メモ帳が揃っていて、床には気持ちよさそうなソファーがあったりする。意外といい場所かも?
マリー「猫なのだから、そのへんに寝そべるといいぞ」
猫のん「いや、そういうわけにも……。三十過ぎると、人目も気になってねぇ」

 ビルに設けられたテラスで、ペットボトルのお茶を片手にひと息つく面々。中央には現役女子校生の吟遊詩人がいて、即興の唄を奏でていた。
吟遊詩人「でさ、○人はけっこう過去に悲しみを抱えているやつだから、なぜか村人を斬り殺して逃げちゃうわけよ。そこからの話でまた一話書けちゃうっていう……」
 聴いていて、ちょっと高校生のあの日に帰りたくなった猫のんだった。
猫のん「ほんもののストーリー・テラーだ! 俺はいま、本気で感動したっ!」
ろろみ「夏コミが近いですから、お友達どうしで二次創作のネタをお話しして楽しんでいるのでしょうね」

 猫のんが立ち聞きで感動しているその間も、マリーは旅の計画を練っていた。
マリー「行くならば、あそこか……、いや、あそこか。そうだ!」
 浮かんだアイデアに、興味津々でついていってみる。マリーが案内してくれたのは一軒の歌声宿だった。
 た、たしかに安い!

 カラオケボックスに入った一同は、さっそくネタ歌をリクエストした。ガンダムやワイルドアームズのBGMが流れるなか、CAST! をプレーする。
電子妖精「ピピッ、ガーッ! ……、あら? 私……、いつのまにTSしてる? しかも負けてる?」
 故障気味の電子妖精は、皆の集中攻撃を受けてTSしまくったのであった。


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Last-modified: 2008-07-19 (土) 10:32:25 (5777d)