マニアックツアーレポート †
行った店の傾向が固まってるのは誰かの趣味w
登場人物 †
- 姫川マサキ
- ドジっ娘お嬢様。異様に鞄の重い人。
- 三塚井力也
- 帽子を常に被った少年。少々寝不足。
- 五条桃李子
- ツンデレお嬢様。PCを持ち歩く時は常にマウスも持ち歩く?
- 愛恩クロ
- 猫っぽい少年。小柄な反面(?)、大きい物に興味があるらしい。
- 北村春美
- MTF少女。中古屋巡りが趣味であることが発覚。
[1009] マニアックツアーレポート(前編) †
「えっと、ホテル出る前の書き込みだと、力也くんがこの辺にいるはずなんだけど」
8時前に東京駅に到着したあたしは、八重洲中央口で待機してるはずの力也くんを探してた。
「どっちかなぁ…………改札出てるか出てないか」
まずは改札の中をチェック。いないみたいだったから、改札を出てまた探してみた。
「あっ、見つけた。おはよっ」
「よう…………夜行列車の中って、あんまり熟睡できねえな」
「狭いもんね」
力也くんは、少々眠そうだった。
「一応、ブルートレインだったんで、写真撮ってみたんだが」
(力也のデジカメ:富士フイルム『FinePix A201』)
「ブルートレインって、客車が青いからブルートレインだったはずなんだけど」
力也くんが撮ったのは機関車。ヘッドマークはついてるけど。
さっき電車の中で、桃李子さんからメールを受信してたから、東京駅で合流する予定のマサキちゃんと二人に、メールを送信。銀の鈴で待ち合わせることに。
そのままここで待っててもよかったんだけど、地下街の方がお茶するのにはよさそうだったから、二人で移動した。
「一文字足りない」
八重洲の地下街に降りてすぐ目に付いたのは、『カメラのきむら』。確かに一文字足りない。
「確か、同じグループだったはず。キ○ムラがきむらを吸収合併したんじゃなかったっけ」
八重洲地下中央口まで戻ったところで、あたしは致命的な間違いに気づいた。
「銀の鈴って構内なのね」
滅多に来ない場所だから、正確に把握してない。
ただ、改札を出たところにある店に用事があるから、また構内に入るってこともできない。もう一度、二人にメールを送ろうと思って、ケータイを取り出すと、二人からほぼ同時に返信があった。
「マサキちゃん、遅れるって」
「何かあったか?」
「『恒例の』遅延だって」
構内にあった電光掲示板に、東海道線遅延のお知らせが、テロップで流れてた。
そんなには遅れないと思ったから、二人には『八重洲地下中央口を出たところで待ってます』と、再度メールを送った。
そのメールから10分ぐらいで、桃李子さんが到着した。
「おはようございます」
「おはよっ」
実は昨日、桃李子さんとあたしは、品川で会ってる。挨拶はそこそこでいいと思う。
「なんか、お疲れのようですわね」
桃李子さんも力也君の様子に気がついたようだ。
「姫川さんは?」
「電車が止まってて遅れるそうだ」
「あんまり遅かったら、どっか店に入って待った方がいいかも」
ここから20分ぐらい待っても来ないようだったら、三人で店に入るつもりだったんだけど…………マサキちゃんもそれから10分ぐらいで到着した。
「おはようございます」
「日常的に遅延するとは、全く困ったものですわね」
この辺では電車の遅延は、日常茶飯事みたい。
「あっ、そうそう。これ、お願いされてたんだけど」
あたしは昨日、幕張で撮った写真を、みんなに見せた。
(春美のデジカメ:富士フイルム『FinePix F31fd』)(桜からの貸出機)
「『KIZASHI2とか大気とかプヨによろしく』とか、書き込みされていましたね」
「そうそう」
「なんか、空飛べそうだな」
『大気』を見た力也君の感想は、ストレートだった。
「で、『プヨ』は外装のサンプルがあって、こうやって触れたの」
「どんな感じでした?」
「…………シリコン」
「胸と同じ感触なのでしょうか(ぼそっ)」
「入れてないって(ぼそっ)」
桃李子さんがそんなことを聞いてきた。ちなみに、今日はパッドも入れてない(笑)
「南口の方に歩いていくと、お店があったはずですわ」
桃李子さんの案内で、あたしたちは駅地下を歩いてたんだけど、お目当てだった店の手前に軽食喫茶があったから、そっちに入ることにした。店員が注文をまるでコントのように聞き間違えてたんだけど、それは書かないことにしとく。
「るっきゅん持ってきました」
「同じじゃない!?」
マサキちゃんの大きなリュックには、あたしが持ってるのと同じるっきゅん(FMV LOOX-U)が入ってた。
「他にも、これとかこれとかこれとか」
工人舎SH、ザウルス、EM-ONE。これを持ち運ぶのは相当重い気がする。
桃李子さんはあたしが以前譲ったるっぴー(FMV LOOX-P)。力也くんはこれまたマサキちゃんから譲ってもらった工人舎SA。これだけ揃うと、テーブルに並べるのがやっとかも。
「そうそう、型番で直販かどうかすぐ判別できるんだって。マサキちゃんのは店頭モデルね」
FMVの直販モデルと店頭モデルは、型番にスラッシュが入っているかどうかで判断できるとか。あたしのは直販モデル、マサキちゃんとか桃李子さんのは店頭モデル。
「あ、EM-ONEが圏外になってます」
「地下だからなのか……」
東京のど真ん中でも平気で圏外になるE-mobile。『ひとたび郊外に出ると駄目駄目になる』って誰かが言ってた気がするけど、なんか分かった気がする。
「Willcomの機種変更という選択肢が、正しく思えてきた気がいたします」
桃李子さんの注文したモーニングセットと、あたしの注文したイタリアンモーニングセット。違いはゆで卵が付くか、トーストに卵が載っているか。桃李子さんの方が『当たり』だった気がする。
「そうそう、このカメラに後付でレンズつけようと思ってたら…………」
喫茶を出た後、あたしはF31fdを見せながら、マサキちゃんにこう切り出した。
「何かあったんですか?」
「レンズの型番をgoogle検索したら、『作業用ザ○』が大量に検索結果に出てきちゃったんだって」
「ぷっ……くくっ…………」
「姫川さん、大丈夫ですか!?」
「あと、レンズを買ったことを家族に気づかれないための方法で、『ド○のバズーカと入れ替えておく』ってのも、どっかの掲示板で聞いたけど…………」
少しの時間、マサキちゃんは立ち直れなかった。この手の話題、たくみ君が好きそうだけど(笑)
同じく地下街にある、東京みやげセンター。
あたしたちはそこで、変な雑誌を見つけた。
「『秋葉王』?」
毎月32日発売とか。
「『太郎物語』…………太郎って、やはりあのお方なのでしょうか」
秋葉原で演説した政治家なんて、そうそういないはず(笑)
「力也くん、おみやげに買って帰る?」
「遠慮しとく…………」
「あちらに妖怪が並んでます」
『妖怪』には人一倍反応が早い(?)マサキちゃんに誘われ、奥の冷蔵庫に行くと、『妖怪汁』とかが並んでた。
「これ、境港が発祥でしょ」
ちなみに、近くにあったキャラクターショップで、力也くんがラスカルのしっぽに反応してたけど、理由はよくわからない。
「昨日の悪夢が脳裏をよぎるかも」
「何かあったんですか?」
秋葉原へ移動する前に、あたしはトランクをロッカーに預けることにした。東京駅はそう詳しくないので、マサキちゃんについて来てもらった。
「うん…………幕張の駅で、ロッカーが空くのに1時間半待たされたの」
「そんなに!?」
「ここに入れてから移動すればよかったと、後悔した」
ちなみにあたし、幕張駅で降りるときに突き飛ばされたりもした(笑)
ずいぶん奥の方だけど、ロッカーに荷物を入れて、あたしたちは秋葉原へ移動した。
「クロ君はここで待ち合わせなのよね」
待ち合わせ場所のカフェに歩いていこうとすると、
「五条のやつ、なにを急いでるんだ?」
後から走ってきた桃李子さんが、あたしたちに気づかずに通り過ぎていった。
「声、かけます?」
「ほっといてもいいかも(くすっ)」
桃李子さんはそのまま、カフェに真っ先に着いていた。
「よぅ」
カフェでレジに並んでいたところに、クロ君が現れた。
「少々遅刻だぞ」
「これぐらいいいだろ。別に遅れたからどうこうってのもないし」
この時間、まだ開いてる店は少ない。しばらくここでゆっくりすることにした。
「これは?」
「マサキちゃんはよく知ってるかもしれないけど」
紅葉まんじゅう。広島を出るときに、この日のために買っておいたもの。普通じゃないものを選んだんだけど。
「チョコを戴きますわ」
「俺はクリームチーズで」
「抹茶にします」
「粒あんか」
普通のは売れ残った。
「へぇ、こういうカスタマイズなんですね」
「物書き用、かな」
るっきゅんは人によって、キー配置のカスタマイズがいろいろある。あたしのカスタマイズも、ネット上では公開されてない配置になってる。
マサキちゃんのるっきゅんは代理購入みたいなんだけど、渡すときにあたしのカスタマイズも参考にするみたい。証拠写真を桃李子さんと一緒に押さえてた。
(マサキのデジカメ:リコー『Caplio R6』(レッド))
(桃李子のデジカメ:オリンパス『CAMEDIA X-1』)
「Windowsキーを絡めたショートカットをよく使う俺はどうすれば」
「右Shiftキーをつぶすという手もあるけど」
「あ、もしかしたら自分で買いたくなってきちゃったかも」
マサキちゃん、もしかしたら買っちゃうかも(笑)
「あっ、喫茶に人が来たみたい」
マサキちゃんのケータイには、書き込みがあったらメールが届くみたい。
「今日中に999と1000ヒットいきましょう、だって」
「ここから一つ書き込んでみますわ」
桃李子さんがそれを見て、るっぴーで現状報告を書き込んでた。
「桜さんがいらっしゃるとか?」
「いないって」
あたしたちはまず、ヨドバシ裏のキタムラへ来ていた。あくまで『カメラのキタムラ』であって、決して『北村カメラ』ではない(笑)
「何か、気に入ったものはみつかりました?」
「ド○のバズーカは置いてないね」
ここのお店、中古の品揃えがよくって、毎回寄る店だったりする。たまにお買い上げもする。
でも今日は、ちょっとスルー。9月にお散歩用レンズは買っちゃって、広角や大口径と合わせて一通りのレンズを持ってるから、買うとすれば望遠なんだけど、あんまり置いてなかった。
「45万のレンズとかな」
「それ、キヤノンマウントじゃないでしょ」
ちなみに、クロ君の知り合いに、車道楽で写真道楽の喫茶店マスターがいるんだって。クロ君曰く『遊び人』。合ってるかも。
「1stのコタローが持ってたカメラか」
「スケッチブックで割られたレンズはどれでしょう?」
「標準って書いてあったからこれじゃない?」
「高校生の身分で2万は結構でかいな……」
…………実はここで正午を回ってた。続きは後編でっ。
[1013] マニアックツアーレポート(後編) †
文化の日。オ○ク文化の中心地にいるはずなのに、なぜか電気屋ばかり巡ってる、姫琴高校1年桜組のみんな。次に行くのは?
…………………………
あたしが『OQOはソフマップの直販で売ってる』ってマサキちゃんに言ったせいか、次に行くのはソフマップになった。
途中、シャッターが閉まってるのに『営業中』の札がかかったそば屋の前を通り過ぎたりしながら、到着。
「どっかで見たマシンだらけだ…………」
マサキちゃんや京香ちゃんの持ってるパナソニックのW5、あたしのるっきゅん、桃李子さんのるっぴー、力也くんの持ってる工人舎SAも。で、お目当ての機種も。
「これがOQO」
スライドキーボードの超小型Windowsマシン。他にも全面タッチパネルの『Vega』、ちょっとザウルスっぽい『FlipStart』、斜め刻印のキーボードが特徴の『Everun』とか。
「んぁ…………オレはザウルスでいいな」
しばらくOQOをいじってたクロ君は、そういう結論に達してた。
「ここ、キーボードじゃないか?」
「それ電池のロック」
危うく強制シャットダウンさせるところだった(笑)
「でもこれは、気に入ってもかなり勇気の要る値段ですね」
FlipStartはちょっと考えたけど、Everun以外は20万を超える値段ばかりだった。
「大型ノートにはどなたも興味は示さないようですわね」
「モバイル派がこれだけ揃っているのも珍しいと思う」
一般世間から見れば、かなり変わった趣向を持つ集団みたい。肯定はしないけど、否定もしない。
「あ、これ、この前近所のリサイクルショップで、1980円で売ってた」
「え!?」
目の前にあるのは、PLCアダプター(電気配線をLAN代わりに使うための装置)。ここにあるのはもちろん新品。値札はリサイクルショップの十倍近いお値段。
「転売したら利益が出そうですわね」
「店にもよるけど」
物の価値を正確に把握していない店だと、時々とんでもない値札が付いてることがある。たいていの場合不当に高い値段なんだけど、これは珍しく逆パターン。
「帰ってまだ置いてたようだったら買うかも」
「みなさん、何をお使いですか?」
マウス売り場の前で、どんなマウスを使ってるかの話になった。
「わたくしのは…………これですわね」
というか、桃李子さんは昨日も今日も持ち歩いてるから、現物が目の前にある。
「あたしはこれかな?あと、こっちにある『ごろ寝』のオリジナル版もある」
「これ、使い心地ってどうです?」
「置き場所がなくても使えるのは便利。あと、これを持ってると、メガパペットとかが操縦できそうな気がしてくる」
「…………やっぱこれが一番いいよ」
クロ君がその横で、見慣れない形のマウスをいじっていた。
「握り心地がボールに似てるな」
「投げ飛ばしたくなるかも」
「コードレスですから、イライラしている時は注意する必要がありますわね」
で、ソフマップの横もソフマップだった。ただしこっちは中古。
「ん〜とねぇ、これあったでしょ、これもこれもあった。このプリンタは家で現役」
「これ、片賀井さんの機種ですね」
「あたしも持ってたことある」
あたしが過去に持ってた、あるいは今持ってる機種が大量に並んでた。るっきゅんに行き着くまで、かなり短いスパンで買い換えを行ってきたせい。
「私、これまでに買ったCPU総数だと負けてしまうかも」
手持ちのCPU総数(?)では負けてないマサキちゃん。『売るか残すか』の違いだって。
ちなみに現役のプリンタ、外部バッテリーもついててどこにでも持ち運べる。当然持ち運べるぐらい小さくて軽い。普通のノートパソコンとそんなに容積は変わらない。…………ただ、るっきゅんと比較すると分が悪い(笑)
「比較対象が間違っていると思います」
「そうそう、ここ」
マサキちゃんもよく行く(?)、『モバイル専科』。ザウルスを使ってたことのあるあたしも、何度か買い物をしたことがある。
「LOOX用ケースですわね」
「LOOX-S用だけど、るっぴーは確かサイズがほとんど同じだったような」
でも、桃李子さんのるっぴーはあたしが一緒につけたケースに入れて持ち運んでるみたいだから、特には必要ない。
「みもりん、喜びそう」
隣には、さっきの店で見たみもりんのマシン(InterLink)の純正オプションが、大量に並んでた。
ちなみにあたしも持ってて、型式に『EX』ってついてたんだけど、箱を開けたら純正の無線カードとディスプレイケーブル(ホントは別売り)が、本体とは別の箱にそのまま入れられてた。つまり、箱の中に箱(笑)
「ザウルスが壊れてしまったら、またここにお世話になるかもしれませんね。ここで買うとおいくらなんでしょう?」
「…………たぶん、ここの9って数字が、4になるぐらいじゃないの?」
「いっぱいだな」
お昼は豚カツ屋って最初から決まってて、クロ君に案内してもらったんだけど、最初の店は客で一杯。
「ここで待つか?」
「いや、ここは狭いから、並んで入れねえし」
5人がまとまって座れるところが理想。もっとも、『5人』って結構難しいんだけど。
「次探すか、と」
近くにあったモニター専門店に入っていくクロ君。
「大きいのが欲しいそうですわ」
で、その向かいの店では、
「あっ、ここもTabletEditionは売り切れてる」
マサキちゃんがWindowsXPのTabletEditionを探してた。もっとも、以前秋葉原のすべての店を回って(本人談)見つからなかったっていうから、期待薄なんだけど。
「有名なおでん缶。最近は焼き鳥缶やラーメン缶もある」
「いかにも庶民の味ですわね」
「向かいのラオックスにも自動販売機があったのですが、閉店しちゃいました」
「力也くん、おみやげに買う?」
「う〜ん…………」
ちょっと、ラーメン缶が食べてみたかったかも。
でも、おでん缶は地元でも見たことがあるから、そのうち見られるかなと思ってスルー。力也くんも悩んだあげく、結局買わなかったみたい。
「そうそう、あたしのってこれ」
ソフマップの中古モバイル専門館。店内が狭くて入るのにはちょっと覚悟が必要。
あたしの持ってる(今日は持ってきてない)G7や、桃李子さんの持ってるX-1、マサキちゃんの持ってるR6(色違い)もあったような。
「ちなみに、穂香さんのはこれ」
「一般の高校生ですと、このぐらいの値段が現実的かもしれませんわね」
そんな桃李子さんの鞄の中に入ってるデジカメも、同じ値段です(笑)
「握力測定?」
ゲームセンターの前にある機械に、桃李子さんがぴくっと反応した。そういえば身体測定の時に、天王寺さんが壊しちゃったんだっけ。
「それじゃ、まずはオレから…………………………んっ!」
クロ君の握力は67kg。平均よりかなり上。
「それじゃ、次は五条だな」
「わたくし、ですか?」
とまどいながらも、測定。あたしはその数値に目を見張った。
「46kg!?」
平均の倍近くある。もっとも、桃李子さんの染色体はXY、つまり男性だから、そっちの平均と比較するのが正しいのかもしれないけど、それでも平均を上回ってる。
「姫川さんもいかがでしょうか?」
「わたし、20kgもいけばいい方だと思いますが…………」
でも、結果は47kg。
「揃いも揃って、お嬢様は馬鹿力の持ち主ばかりなんだ…………」
力也くんが、そんなことを言っていた。
「ここだ」
クロ君が紹介してくれたのは、『丸五』って豚カツ屋。そんなに広くはないお店で、しかも入るのが遅くて二階が使えなくなっちゃってたから、あたしたちは店の前で30分ぐらい待たされた。
「あ、ボーカロイド入れてきたのにデータがない」
一部で話題になってるミクちゃん。マサキちゃんのるっきゅんには入ってたみたいで、この待ち時間の間に披露しようかと思ってたみたいだけど、データがなくって結局使えずじまい。
「ノートは軽くなったんだけど、その分荷物が増えた」
「ありがちよね」
重そうな鞄を肩から下ろした力也くん。マサキちゃんから譲ってもらった工人舎SAは、これまでのノートの3分の1以下の重さらしいんだけど、その分だけ本が増えちゃって、結局重さは一緒なんだって。
たまたま5人並んで席が取れた。カウンターだけど。
桃李子さんとあたしがヒレカツ定食、残りの3人が特上ヒレカツセット。400円違う。
「さっきから書き込みの数は?」
「変わっていないですね」
「今日中に1000ってことは、あと3つか」
「1000番はマスターに任せてあげましょう」
って理由で、ここでも一つ書き込むことに。るっきゅんを動かしてたあたしが書くことになった。
注文を受けてから揚げるから、書き込みをするぐらいの時間は十分にある。書き込みが終わって少ししてから、注文していたヒレカツ定食が出されてきた。
「どう?」
「美味ですわね」
特上じゃなくても、十分おいしい。これが特上だったらどうなのかなって、ちょっと考えた。
奥の方を見ると、その特上ヒレカツセットを、クロ君がものすごいペースで食べてた。
「駅前店?とてもそうは思えないのですが」
秋葉原のソフマップは店舗再編で、昔のような『○号店』って表記がなくなった。ここは中古駅前店(旧8号店)。
「駅への入り口がある側でしたら、駅前といえるのではないでしょうか」
「好きこのんで『駅裏店』なんて名前は付けないでしょ」
そのままガード下をくぐって、桃李子さんがさっきちょっとだけ食いついてきたデジカメ探しに、ヨドバシカメラへ。秋葉原駅の側から入ろうとすると、入り口手前でデモンストレーションが行われていた。世界最小の二足歩行ロボットだった。
「たくみの奴がいたりして」
「あいつ、上野の博物館に行くって言ってたが」
上野の科学博物館では、『大ロボット博』開催中。確かにそっちかもしれない。
(ヨドバシの中のことについては[1004]の書き込みを参照。だからこっちは省略っ)
「春美さん、お帰りは何時でしたか?」
「18時50分発のN700系」
「まだ、1時間ぐらいゆっくりできそうですね」
そう思って、秋葉原駅近くのカフェを色々回ってたんだけど、なかなか見つからない。
ヨドバシ横のヴェローチェでやっと席を見つけて、そこでゆっくりすることに。
「まだ、春美さんの書き込みが最後ですわね」
桃李子さんがケーキをつつきつつ、るっぴーを開いて確認すると、あと2つで1000書き込み。
「もう一つ書いた方がいいんじゃないか?よけいな手間が減るし」
「…………そうですわね」
朝に続き、桃李子さんが今回のオフについて、書き込みを行っていた。
「……平方根ですわね」
ヴェローチェを出たところにある電光掲示板に表示されていた、謎の数字の正体に、桃李子さんが気づいた。
「ほんとだ」
「使い道がないのでお遊びで表示させてるのかもしれませんね」
多少皮肉っぽく、マサキちゃんが感想を漏らす。
「次は円周率かな?」
「対数というのも考えられますわ」
「じゃ、オレは逆方向なんでここで」
「あれ?電車は乗らないの?」
「TS関連で欲しい本があってな」
クロ君はそれを買ってから乗るつもりらしい。ジャンプスクエアって話もちょっと出たけど。
あたしたちは列車の時間が迫ってたから、待つことはできなかった。
3分ほどで東京駅に着いた後、朝と同じようにロッカーに荷物を取りに行き、新幹線の乗り換え口に向かった。
「そういえば、今日の桃李子さんとあたしって、雰囲気似てるよね」
「べ、別に昨日のイラストを参考にしたわけでは、ございませんことよ」
実はあたし、昨日桃李子さんと会ったときに、『友○小学校冬服の桃李子さん(男子服)とあたし(女子服)』と、もう一枚イラストを見せていた。
最近、包みの上半分が真っ白な、ペットボトルのコーヒーがあるんだけど、なんかそれ見てると、描かずにはいられないわけで。
そこに描いた女の子に、今日のあたしの服装を思わせる服装をさせてたら、それによく似た服を桃李子さんが着てきた。白いジャケットにミニスカート、黒いブーツ。
まあ、全体の雰囲気は似てても、桃李子さんはお嬢様っぽく見えて、あたしはボーイッシュに見えたりする、そんな違いはあったけど。
「ええっと、入場券ってどうやって買うんでしょう」
そう言いながら、マサキちゃんが窓口に並んでたんだけど、あたしはその横にあった自動券売機で、入場券が買えることを確認して、手招きした。秋葉原駅から乗った分がカウントされずに、入場券にしては高くついちゃったみたいだけど。
「それじゃ、また今度。年末にまたこっちに来る予定だから、都合が合ったらよろしくね」
「お待ちしておりますわ」
18時50分、桃李子さんたちに見送られながら、あたしを乗せたのぞみ51号は、西へと旅を始めた。
…………………………
「32940円!?」
ほたるさんが広島駅前の駐車場で、目玉が飛び出るほどの高額な駐車場代金を請求されそうになったのは、その4時間と少し後でした。もちろんそんなお値段になるのを予想して止めたわけではなく、実際は1500円で済みましたが。