特製料理『紫神はるかスペシャル』の怪 †
喫茶ブルーコスモスNo.358より転載
……青空がとっても映えるのは何故だろう?
「建物が盛大に吹き飛んでるからですね」
…………遠くからけたたましい叫び声らしきものが聞こえるのは何故だろう?
「そりゃ、なんか向こうの方で暴れてるからだな」
………………そして、いつも知的でクールビューティな人事部長が、なんか呆然とした感じにうろたえているのは何故だろう?
「元凶だからだ」
……というわけで、爛ちゃん注文(だったかな)のはるかスペシャルですが……紫神遥人事部長、なんつーもの拵えますかあんたは。
「いや、あの、そのな、私にも何が何だか」
「とか言う割には見事なフレッシュゴーレムに見えるんだが」
「僕には八岐大蛇に見えますけど」
えーとつまりですね。
贅沢で美味そうな料理の材料から、今が一番ホットで旬でクライマックスな人気作『ホーリーメイデンズ』のラスボス、八岐大蛇なんぞをこしらえやがったんですよ、うちの人事部長は。まったくビックリだよ。
「何かよからぬモノを混ぜたのではないのか?」
混ぜただけであんなになるかぃ! わざとだろ、絶対わざとだろ!?
「それだけは、真名に誓って断じて無い!」
飛鳥たち移住組(魔術士限定?)にとって『真名』を持ち出すというのは、その発言に己の全身全霊をかけることを意味するのだ。豆知識その一。
真名に誓うからにはわざとは無いんだろうが、とにかくどうすんのアレ? 放っておくのはよろしくないんじゃ?
「北に向かっているようだな」
「そういや、メイデンズはもうすぐ北の大地で最終決戦らしいな」
「まだ中学生だのに大変ですねぇ」
……まさかあれを放置して、メイデンズに退治させようってんじゃないだろうな?
「フレッシュゴーレムだけに知能もないし破壊力も本物に遠く及ばないはずだから、すり替え気分で送っとけば彼女たちもだいぶ楽になるんじゃないか? なあはるか」
「ぁ――いや、その、ええと……」
「こうまでたじたじのはるかさんも、珍しいですねぇ」
「なかなか見れるもんじゃないから、しっかりビデオ撮影しとくといいぞ」
「撮影するな!」
はいはい、話をそらさない! 北海道までアレ放置、なんてのが許されると思ってるんですくぁ!?
「この空間では被害なんて在って無いも同然だから別にいいし。メイデンズの居るとこは別の空間だから、数百キロ動くまでもなく目的地に着くわけで」
着いた後は?
「メイデンズが頑張って退治。」
その他力本願がよくないって言ってるんじゃい!ヽ(`Д´)ノ
というわけで……ホーリーメイデンズ最終話で登場する(かもしれない)八岐大蛇は、ひょっとしたらはるかによって作り出された料理なのかもしれません。
さーて、建物の修理(再描画)もしなくっちゃぁ……
「ちょっと! 『はるかスペシャル』まだなの!? もう何日待ってると思ってんのよ!」
……あっちの方角で暴れておりますので、どうぞご賞味ください。
「……(望遠鏡を覗いて)……あんなの食べれるかっ!!」