ある騒々しい一日 二日目

喫茶ブルーコスモスNo82より

「学校の七不思議?」
「うん、うちの学校にもあるのかなーって」
あたしの目の前で、ろろみがろろみジュースを飲んでいる。
こうやって見てると、あぁ、やっぱり可愛い子だなぁ、って再認識したり。
でも、なんで七不思議? 新作のネタにでもするのかな?

あ、申し遅れました。あたし小出史枝。花も恥じらう高校二年生女子。
好きな食べ物は……ってまぁ、そんな事はどうでも良いか。

「七不思議かぁ、あるにはあったけど……音楽室のピアノとか、ありきたりのばっかりだよ。うちならでは! ってのは無かった気がする」
「そっかぁ……」
「なに? 新作のネタかなんか?」
「うん、ちょっと短編をね。夏だし怪談ぽいのも良いかなぁ、とか思ったんだけど」
「あ、うちの学校、変わった怪談ありますよ」
突然会話に割り込んできたのは、この店のウェイトレスの女の子。
確か名前は冬雪ちゃん。まだ中学生だそうだけど……労働基準法とかどうなってんだろ。
「変わったの? なになに?」
ろろみは興味津々みたい。
あたしとしては、その、怖い話は、実はあんまり……ちょっとだけ。
ちょ、ちょっとだけ、苦手だったり、したりもする。
「えーとですね、男の子と女の子が一緒に転げ落ちると中身が入れ替わっちゃう13階段とか、男の子を襲って女の子に変えちゃう花子さんとか。男の子を襲って女の子に変えちゃうカシマさんとか……」
「な、なんで性転換ばかり?」
ろろみがそう呟いた。あたしも同感。
なんで見事に性転換ばかりなわけ? この子の通ってる学校てどんななの?
「楓さん、楓さんの学校には、何か変わった怪談とかあります?」
と、冬雪ちゃんが隣のテーブルに座ってる子に話を振った。
楓さん、と呼ばれた子。
黙ってるとおっかなそうな雰囲気だけど、話してみると人当たりの良い可愛い子。美少女、と言っても良いかも知れない。
で、なんでもこの楓って子、どえらく強いらしい。
お店に因縁つけてきたヤクザっぽいのをアッというまに退治したとか。
凄かったんだよ。ばーっ! がーっ! どーんっ!! って。
と、この店の高校生マスター、美空ちゃんが言ってたっけ。
「ん? うちの学校? あー、……うちの学校は、そこらの七不思議じゃ束になっても勝てない鬼が居るからなぁ……」
それは十分に怪談じゃないのかな。
「あ、うちの学校にあるよ、すっごいの!」
と、またまた話に割り込んできたのは、先にも語ったこの店の現役女子高校生マスター、美空ちゃん。
「あのね、夜中、プールに忍び込んだ子達がね……」
ノリノリで話し始める美空ちゃん。
良いよねこのお店、和気藹々とした雰囲気が、さ。
この雰囲気は確かに好きだけど――お前ら働け。とか思ったり。
「あ、あの、ろろみちゃん、ちょっと良いかな?」
「あ、はい、なんですか? サイン?」
「あ、うん、サインも欲しいんだけど、あのね、良かったら……名刺くれない?」
いや、だから働けってば。

――次回、「真夜中のプール(ポロリもあるよ!)」に続かない。


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Last-modified: 2006-11-15 (水) 00:18:47 (6388d)