※この話はある程度フィクションです。

登場人物（役柄） †

・各務ちひろ（天稀代理）
　火力”だけが”強力な魔法少女。体力ないのに行動力だけはやたらある。
　そこかしこで小学生に勘違いされつつ現地へ。ってかしらを切れば旅費は半額だったのに。

・前田のぞみ（ほたる代理）
　TS原因に悲愴感のあふれる魔法少女。回復系以外一通りの魔法が使えるユーティリティプレイヤー。
　ちひろから突然話を持ちかけられて付き合うことに。

・？？？？
　二人の魔力を狙う銀髪の男。魔法が使えるのに両刃の剣も所持しているイレギュラーな相手。
　決闘の聖地（？）で剣を手にして待ち構えている。

・碓氷冬雪（特別出演）
　遠く旭川の地にいる青い巫女さん。
　「ときわ公園」つながりでいきなり宇部に現れる。

・？？？？
　緑の髪をした少女。忽然と姿を現す。

ふたり旅。 †

♪August 1, 17:30 at home/Hiroshima Station. †

　♪〜♪〜〜♪〜♪♪♪♪〜
「もしもし」
『お盆にそっち行くんですけど、どっかいいところあります？』
「いきなりですね。　でも広島や山陰はだいたい行っちゃってるって聞いたから」
『山口か、四国かですか』
「個人的には山口の方が避暑できておすすめ」

　こうして、ふたり旅は始まる。

♪August 8, 13:40 at Shin-iwakuni Station. †

「なんか、タイムスリップしちゃったみたい……」
　新岩国駅に降り立ったのは、各務ちひろ。ここまで来るために乗ってきた列車の未来的なデザインとは裏腹に、そこには３０年ほど前から時が止まったかのような情景が広がっていた。
「うわ、このフォント……」
　駅の各施設の案内板、そして”みどりの窓口”の案内板。首都圏でいえば博物館に置いてあってもおかしくないものが、現役で稼働していた。
「お待たせ」
　その列車到着からわずかに遅れてきたのは、前田のぞみ。盆前のありえないぐらいの交通量により、バスが遅れたという。駅前ロータリーを見ると、上下共に１時間に１本という列車のダイヤには見合わないほど、びっしりと車が埋まっていた。

♪August 8, 16:00 at Tsunoshima Bridge. †

「で、最初はここ」
「どこです？」

「角島大橋。　車のCMとかでけっこう有名だよ」
　テレビにも車にも興味がないちひろには、わからなかったらしい。
「そもそも、さっきの駅からいきなりここって」
「ちひろちゃん、そこは指摘しちゃダメ」
「…………せめて”ちゃん”付けはやめてください」
　実年齢は二人とも同じである。なお、もちろん読者も移動過程を指摘してはならない……

♪August 8, 16:20 at Oohama Beach. †

「これ、食べて欲しいんだけど」
　角島へ渡り、少し奥へと入る。季節柄盛況の海水浴場を横目に見つつ、のぞみはちひろにあるものを勧めた。
「ワカメソフト？」
　聞いたことがない。ちひろは首をかしげた。それでも一応、”名物だから”という声に押され、食べてみる。
「…………うげ」
　細かくカットされたワカメがミックスされた、ワカメと塩味のソフト。”ゲテモノ”という言葉の似合う一品であった。
　ちひろは後悔するとともに、『クール便でエーテルワークスに送りつけよう』という邪な気持ちにもなった。

♪August 8, 17:20 at Shimonoseki City. †

「続いて下関に到着」
　繰り返すが、移動過程を指摘してはならない。
「ちょっと寄り道！」
「え？　え！？」
　無理矢理引きずられていくちひろであった。
「これ…………」

「『みそら保育園』…………」
　偶然である。
「ちっちゃくなりすぎです」

♪August 8, 19:00 at Kaikyo Yume Tower. †

「さっき見たデジカメで気分悪くなった……」
　3Dデジカメの液晶は、むろん3D液晶である。新商品なので触りにいってみたのだが、二人揃って気分が悪くなった。

「…………上、登る？」
「怖いです」
　高所恐怖症のちひろにとって、展望台の高さでは日本のタワーでベスト３に入るここへ登るのは、少々勇気が要ることだったらしい。
「普段のちひろちゃんの移動の方が怖い気がするけど」
　言うまでもなく、ブーストで空を飛び、逆噴射で着陸する方が、余程危険である。
「今回も結婚パーティーのようですね」
　先日の名古屋テレビ塔と同じである。中間層にあるレストランは貸し切りとなっていた。

「あれが巌流島」
　日本でもっとも有名な決闘が行われた場所である。現在は埋め立てにより、当時と比べて約６倍の大きさとなっている。
「あ、ライトアップされた」
　日没後３０分で点灯し、２２時まで点灯している。二人の銅像もライトアップされるらしいのだが、残念なことにこの時間に島まで行く船はない。
「明日行きましょう」
　元々、その予定である。
　ここからは巌流島、そしてその奥に見える門司の町並みだけでなく、下関の町並み、そして関門海峡にかかる関門橋も、美しい姿で望むことが出来る。
「あそこ、下から見上げるいいスポットがあるけど」
「行きます」

♪August 8, 20:30 at the Straits of Kanmon. †

「ここって……パーキングエリアじゃ」
　ライトアップされた関門橋を、見上げる。昼夜問わず絶好のスポットであるため、ここで休憩するドライバーは多い。
　何度もここへ来たことのあるのぞみと違い、ちひろは初めてであった。
「ここって泊まれるんだよ」
「え！？」
　そこには『旅籠屋』と書かれていた。

　そして、対岸。
「フグの口から吸い込まれておしりから出るんですか」
「だとすれば最悪」
　関門国道トンネルの門司側入口は、そうなっている。ちなみに下関側はそうなっていない。
　なお、このトンネルは自動車（二輪車含む）のみ通行可能だが、二人がどうやって通過したかは指摘してはならない。

♪August 9, 9:30 at Kanmon Tunnel. †

　日本でも数カ所しかない海底トンネル。その入口に二人は立っていた。
「歩くと、１５分ぐらいかな」
　エレベーターで地下へ下り、トンネルへと入る。
「これ……絶対持って帰るといい」
　半円状になっているスタンプ。両側で押すと、きれいな円形となる。過去に押したことのあるのぞみはスルーしたが、ちひろは迷わず押してから進んだ。
　400mほど進むと、一本の線が引かれていた。向こう側に『福岡県』、手前側に『山口県』と書かれている。
「県境、ですね」
　とりあえず、またいで写真を撮ってみた。

♪August 9, 10:20 at Mojikou Station. †

　門司港駅につくと、何故か三脚が大量に据え付けられていた。
「なんだろ…………あ」
　『富士』のヘッドマークを掲げた機関車が、ホームに入線していた。『リバイバルトレイン』と呼ばれる物である。

「たぶん、乗るだけでも大変なんだと思う」
　競争率は高いだろう。
「しかしこの雰囲気、最新鋭の車両でなくても違和感感じますね」
「絶対SLでも走ってないと釣り合いが取れない」
　門司港駅の駅舎は、開業当初の物が使われている。施設案内は基本的に右から書かれている。にもかかわらず、ICカードが使えるのであった（笑）

「こんな満員状態で高速船なんて……」
「騒がないでっ」
　海面すれすれを走る船。海峡なので潮の流れは速く、他の船の発する波の影響も受ける。
　酷く揺れる船の中で、ちひろは少々涙目になっていた……

♪August 9, 12:00 at Ganryu Island. †

「遅いっ！」
　巌流島で二人を待っていたのは、見知らぬ人物であった。
「…………誰？」
　気の抜けたのぞみの返答に、その人物……銀髪の男は手にした剣を杖代わりにして、よろよろと立ち上がった。
「あのなぁ……もう少し緊迫感持てよ」
「…………………………」
　一方のちひろは、それなりに緊迫感を持っていた。
「目的は、ぼくらの魔力ですか」
「…………察しが良くて助かる」
　剣先を、二人に向ける。
「ここが貴様らの墓場だ」
「ここで寝てる暇はないの。　今晩の宿は温泉なんだから」
　再び突っ伏してしまう、ちひろと男であった。

「え！？」
「『ふらくたるセイバー』が受け止められた！？」
　その実力は、想像を絶するものであった。魔力は黒い刃の剣によって増幅され、二人を襲った。
「きゃうっ！」
「くっ！」
「その程度か！」
　魔力でも剣技でも、敵う相手ではない。だとすればどうすべきか……ちひろは考えた。

　――物理攻撃？でも…………

　自身ものぞみも、非力な女子。絶対的なパワーが不足している。
　方法はわかっても、取りうる手段がない。逃げ惑いながら悩んでいると…………
「うぉっ！」
　崩れ落ちる男。その背後には、ハンマーを持ったのぞみの姿が。
「…………なに召還したんですか？」
「『いしづち』召還したらこんなものが」
　宮本武蔵の仕合のほとんどは、撲殺だと言われている。この場における決闘でも、船の櫂を削った木刀で仕合に臨んでいるので、史実に沿った（？）決着であった。
「一応…………」
　一礼して、その場を去った。

♪August 9, 15:30 at Akiyoshi cavern. †

「これだけ人がいれば安心できます」
　秋芳洞。秋吉台の界隈でもっとも有名な洞窟であり、観光客の数は非常に多い。たとえ、それが最終入場時刻の間近であっても。
「もう少しひんやりしてるかと思ったけど、こんなとこかな」
「外もあんまり暑くないですし」
　とりあえず、中に入る。湿気の多いこの場では、防水デジカメが役にたった。

「これができるのに、数万年かかるんですよね……」
「青色魔法少女さんだったら確認できるかも」
「あはは」
　時間だろうが空間だろうが飛び越えてしまう彼女である（笑）

♪August 9, 17:00 at Akiyoshi tablelands. †

「普通の展望台じゃ、ありきたりの写真しか残せないね」
「こっち、行ってみます？」
　『長者ヶ峰展望台』と、そのマップにはあった。マップ上は簡単に行けそうな場所であったが……
「これ、来る人いるの……？」
　実際は予想外に奥地、かつ狭い道を通る必要があった。しかし。
「絶景ですね」
　この地に残る最後の原生林、長者ヶ森。それを含めて、秋吉台のカルストを見下ろせる、絶好の場所。

　見渡せる環境が整備されているにもかかわらず、マイナーなこの場所。二人はしばしの間、雄大な自然を眺めることにした。

♪August 9, 20:00 at Yuda Spa. †

「温泉地、って感じがしてきた」
　湯田温泉。山口市内にある有名な温泉である。二人はここに、宿を確保していた。
「夕食、どうします？」
「とりあえず出てみよう」
　チェックインを済ませ、荷物を置いたら、出てみる。しかし山口駅近くには、開いている店がほとんど存在しなかった。
「一応、県庁所在地ですよね……」
　午後８時を回ったばかりにもかかわらず、である。二人は首をかしげ、そのままその場を立ち去った。
　結局、食べたいと思う店は見あたらず、ラーメンで夕食となった。匂いに釣られて入った店は、いまいちだった。

　ちひろものぞみも、もとは男子高校生である。ゆえに普通の女湯に入るのは抵抗がある。したがって、貸し切りとなる。時間を分けて、入ることとなった。
　ちひろを先に入らせて、のぞみが後から入る。時間は夜１０時半、すでに大通りのざわめきも収まってきた頃だ。
「ちょっと、外がみえるんだ……」
　開いた窓から、空が見える。さして良い天気ではなく、星も見えないのだが……少々の開放感を覚えた。

　そして、先ほど購入したゲームパッドと、リッピングしたゲームデータを元に、起動させようとするが……
「起動しませんか…………zzz」
　悪戦苦闘するのぞみの後ろで、ちひろは布団も掛けずに寝入ってしまった。

♪August 10, 10:30 at Tokiwa Park. †

「旭川のを検索しようとしたら、こっちが先に引っかかるの」
　同じ名前の公園は、早春に訪れたことがある。
　ペリカンと白鳥がマスコットとなっている、この公園。桜百選などにも選ばれているこの公園で……
「おろ？　なんでこんなところに」
「…………妖怪？」
「妖怪ちゃうわ！」
　ちひろより先に、のぞみが先に彼女へ反応した。
「妖怪で”ときわ公園”なら……呼び出しできるかも」
「呼んだ？」
　奥にある常盤神社から現れた彼女は、浅葱色の着物に群青色の袴をまとっていた。
「アヤカシがそこにいるのなら、僕が退治しないと」
　彼女……碓氷冬雪が構えたステッキが、淡く輝く。
「ちょ、おま」
「『アイシクルライン』！」
　氷柱が妖怪（？）を貫くが、致命傷ではないようだ。
「『サンダーバード』！　いっけぇぇぇっ！」
　のぞみのステッキから放たれた金の鳥が、狙い違わず打ち抜く。
「人の話は聞けぇぇぇっ！」
　霧消する彼女を見て、ちひろは一言漏らした。
「……どっかで聞いたような声」

♪August 10, 15:00 at Route 9. †

「朝見たんだけど……津和野で出て行く前のが撮れるかも」
「見たいですね」
　津和野へ移動中。時計を気にしながら、のぞみは確認していた。
　あまりにも有名なSL、『やまぐち』号。実際に走っているのを見られるのは、初めてである。しかし。

「え！？　今出て行ったの！？」
　津和野駅へ到着する直前、それは逆方向へ向けて走り出していた。
「どっかで撮影できます？」
「ブーストかければ、いけないこともないけど……どうします？」
「追います」

♪August 10, 15:30 at Tokusa Station. †

「間に合った、みたい。　この辺、線路が大きく迂回してるから」
　遠くから、汽笛が聞こえてきた。
「ぜひ、撮っておきたいです」
　線路の真上にちひろ、少し角度がついた場所にのぞみが、それぞれ構える。結果……
「け、けほっ、煙をまともに吸い込みました」
　SLなので煤煙を食らってしまったちひろであった。
　なおこの日は通常の運行とは異なり、SL重連での運行であったため、ちひろが食らった煤煙は通常の倍であったことを付記しておく。

♪August 10, 22:00 at a Spa. †

　その晩。島根の山間にある、某温泉。
「これ、プレイしてみます？」
「やりますっ」
　ちひろがプレイしたことのないゲームのうち、是非プレイしたいと思っているもの。その２つのうち１つが、のぞみのPCに入れられていたエミュレータ上で動いていた。
　経験値とお金以外の全てのパラメータが数値表示”されない”という3DRPG、『魔導物語』。『ぷよぷよ』の世界観がここからきていることを知る人間は、少なくなってきている。しかし、それ以前に。
「そこまでエミュレートする！？」
　エミュレータの起動BEEP音、そしてエミュレートしたメモリ容量の表示。細かすぎる再現に、ちひろは少々驚いていた。

　先に入ったちひろに続き、ゲームを始めたことを確認したのぞみは、宿の中にある温泉へと入った。長湯を好むのぞみであったが、温泉の使用時間が決まっていては仕方がない。使用時間ぎりぎりまで使い、部屋へと戻る。
「どうでした？」
「まだ、２階までしか行けてませんけど」
　パッドが欲しい、とちひろはこぼした。

　続いて、昨日２５時まで格闘した上で、やっと動くようになったPSエミュレータ。
「パッドさえ動けば、こっちのもの」
　『ばよえーん』と、５回ほど鳴る。本調子ではないと言いつつも勝ち進んでいくのぞみを見て、このゲームに関してだけは勝てないと、ちひろは思った。
「って、これ斜め入力壊れてる？」
　次のゲームに移行したところで、十字キーの右下の反応がおかしいことに気づく。そのままゲームパッドとともに、ゲームは封印して寝ることにした。
「インターフェースがまともでないとやる気失せますよね」
「まったく」

♪August 11, 11:00 at Nima sand museum. †

　石見銀山までのルートには、一つ見所がある。
「一年計の砂時計」
　世界最大の砂時計が、そこにはあった。

「綿密な計算の元に作らないと、正確に時を測れないとか」
　全長、５メートル。これだけの規模になると、上下で温度も圧力も異なってくる。そこまで考慮に入れ、一年をきちんと測るには、どうすればよいか。完成に至るまでの苦労が、紹介されていた。
「何を考えているのか……そりゃ指摘されますね」
　ゆえに国内では、このガラス容器の作成を請け負う会社が、見つからなかったというほどである。

♪August 11, 12:00 at Iwami Silvermine. †

　島根県唯一の世界遺産、それがここである。
「世界遺産になってからは初めてなんだよね」
　なったからといって、特に何が変わるということもない。近くの世界遺産センターからバスに乗り、銀山の中心部へ出る。
「レンタサイクル？」
「最近は上までバスで行けないらしいね」
　以前来たときとは、少し様子が変わっていた。
「待ちになりますが、よろしいですか？」
　それでも歩くよりは、早く着けそうだ。隣の甘味処で、団子を食べながら待っていると……５分ほどで連絡があった。

「じゃーんけーん、ぽんっ」
　残念なことに、電動自転車は一台しか借りられなかった。
　体力は似たような物なので、じゃんけんで決めることにした。勝ったのはのぞみ。
「けっこう、つらいです」
　ずっと続いた上り坂。なんとか押さずに上がることができたが、ちひろの小さな身体からは大汗が吹き出ていた。
「電動って楽」
　一方、のぞみの方は特にどうということもなかった。電動自転車の能力は恐ろしい物である。

「まさかこんなところでWAONが使えるなんて」
　電子マネーで入場できた、龍源寺間歩。その中の気温は…………
「汗かいた後にこれはキツすぎます」
　外気と20度もの差があった。汗はあまりにも、簡単に乾いた。
「こんな狭いところを掘り進んだんですか……」
　入口から通じる洞穴から、数多くの場所で横へ分岐していく。人ひとりが通れるほどの断面積しかないそれは、当時の労働環境の厳しさを物語っていた。

　十分ほどで中の探索を終え、自転車を交換して下る。そのとき。
「電動でそんな漕いだら！」
　普段の自転車のつもりで漕いだちひろの電動自転車は、悲鳴とあり得ない加速とを共に道を下っていった。ちひろの脳裏に、昨年津山で乗った自転車の悪夢がよみがえった。
　なお、傍目から見る限りでは、普段ちひろが飛んでいる方が余程怖そうに見える。

♪August 11, 14:30 at a Station. †

「これから…………どこへ行くの？」
「元に戻る方法の手がかりが、見つかったって」
　ちひろの身の上を、のぞみは聞いていた。そして、逆もしかり。
「それが本当に使える物なのかどうか、それはわかりませんが……行かないという選択肢は、ぼくにはないです」
「……それは、間違いないと思うよ」
　使える確証など、どこにもない。それでもヒントを求め、あるいは答えを求め、人はさまようのかもしれない。
「楽しかったです。　また、どこかで」
　改札に消えていくちひろ。しかし……
「小人料金で乗れるよ」
「ぼくは小学生じゃありません」
　駅員に小学生と勘違いされたちひろの姿を、のぞみは苦笑しながら見ていた。