青空の小片2

流離太さん作品感想掲示板No35に投稿された作品。
作品舞台は『ホーリーメイデンズ』の、北海道旭川ではなかろうか。


「美月、こっちこっち、この公園だよたしか」
「………なんだかさびしいところね」

やってきたのは二人の少女。
金髪碧眼の『美空』、黒髪で栗色の瞳の『美月』。

黄昏時の公園。
さびついた滑り台やジャングルジムが、橙色に沈んでいる。
人の気配は感じられない。 風さえ止まっている。

「で、なんでこんなところに連れてきたのよ?」

美月は振り向いたが、そこに、同行者の姿はなかった。

「あれ、美空?」

返事はない。

「ちょっと美空、どこにいったのよ?」

黄昏時、逢う魔が時、トワイライト。 危険な時間。
背筋に寒いものを感じて、美月は大声を上げた。

「いるんでしょ? 隠れてないで出てきなさいよ!」

きぃ。
ブランコのきしむ音が、背後から聞こえたような気がした。

振り向いちゃいけない………
本能的に危険を感じて、美月はいよいよ真剣に呼んだ。

「美空! いい加減にしなさい!」

きぃこ。

「美空! おねがい! 出てきて!」

きぃぃぃこ。

「美空! ほんとにいないの? ねえ!」

きぃいいこ。 きぃいいいこ。

そうだ、きっと美空がブランコに乗ってるんだ。
どうして始めにそう思わなかったんだろう。
美月は、振り向いた。

「みそら………」

ブランコは、揺れていた。 美空は、乗っていなかった。
代わりに、鞠のような影が、ゆっくり揺れる板に………。

こちらを、振り向いた。 目がある。 鼻がある。 口元が、ゆがむ。
女の、生首だ。 ふわりと、浮かび上がった。

「きゃああああああああっ」

心の底から悲鳴を上げた美月の前に、赤い着物の少女が、突如立ちはだかった!

「来たぁ! ホーリーメイデンズ! しかも、夏っちゃん!!」

美空が横手の茂みの影から飛び出す。
赤い着物の少女は、二人ににこっと笑いかけて、生首少女に向けて………

(戦闘シーンは本編でお楽しみくださいませ!)

………そして少女は、赤い風のように去っていった。

「美月、見た? やっぱかっこいいよね、メイデンズ!」
「ぐすっ、えっ、ひっく………。」
「しかも夏っちゃんだよ? あたし大ファンなんだ、来て良かったねえ?」
「………もと彼女が泣いてるのに、完全無視? 真剣に怖かったんだからね!?」
「ん、だって泣くことないわよ、ちゃんと退治してくれたじゃない。」

すっく、と美月は立ち上がった。
さっきと逆に、美空の手を引いて歩き出す。

「美月? 帰り道はそっちじゃないよ?」
「そんなに会いたいなら、花子のトイレに一晩閉じ込めてやるから、勝手に待ってろ!」
「あ、それいい! ね、次はアキちゃん来てくれるかな?」

「………あんたのバカはいっぺん死なないと直らないみたいね」
「ね、学校もそっちじゃないよ?」

「踏み切りに放り込んでテケテケにしてやるから、存分に退治されてこいっ!」

「それは、JRのひとに迷惑だよ?」
「あんたは存在自体が迷惑なんだから、たいして変わんないわよっ!」
「そっか、じゃあしょうがない、世界一あかるいテケテケを目指します!」
「よーしよく言った、骨は拾ってあげるわ、さあ死んで来い!」
「や、ちょっと美月、もしかして本気? きゃぁ列車来てるって、やめてぇ!」



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Last-modified: 2006-11-07 (火) 00:34:28 (6397d)