青空の小片1

エーテルワークスに対して寄贈?された作品。
作品舞台は『ZweihanderVTS まおうとゆうしゃのものがたり』に出る異世界【中国】だと思う。
<ご注意>
・この作品の世界設定は、華村天稀さま『Zweihander VTS』によります。
・この作品のキャラクター設定は、少年少女文庫掲載の『青空の魔法』によりますが、
 適宜説明を入れておりますので、モトネタを知らなくても楽しむことができます。
・フルーチェを召し上がりながらの閲覧は、お薦めできません。

「………美空。 ここどこ?」
「中国、っていう、ま、ちょっと別のところ。」
「別のところ?」
「そ。 細かいことは気にしない気にしない!」

みそら、と呼ばれた、背の高い金髪碧眼の少女は、同行者を振り返った。
同行者も背の高い、こちらは日本人らしいかわいい少女だ。

「まぁ、ちょっとだけ付き合ってよ、みつき。 やりたいことがあるんだ。」
美空は美月の腕をひっぱってゆく。


<1幕>

「いたいた。 ほら、見て、美月。」
美空の指差す方向で、グニャグニャとうごめく、透明のゼリー状の物体。

「なによ、あれ。 気持ち悪い。 それになんだか、危険な感じがするんだけど。」
「スライム。 肉食の魔獣だから、とーぜん危険! ところが!」

美空はなにやら液体の詰まった、小さな水玉風船を取り出した。
「ちゃらりらんっ! (株)エーテルワークス謹製、濃縮カルピス原液!」
「………エーテルワークスは輸入元じゃないの?」
「どっちでもいーの! とにかく、これをかけるとねっ。」

さすが、もと男の子。(美空は、すこし前まで『そら』という名の少年だったのだ。)
それなりに決まったフォームで美空が投げた風船は、狙い通り、スライムに命中!
どういう仕掛けなのか、やわらかいスライムの上で、風船は簡単にはじけた。

ふしゅるるる。
カルピスの白い色が、表皮に染み込んでいく。

スライムはみるみる粘性を失い、やわらかく固まって、止まった。

「ほら、この通り! カルピスライム一丁あがり、っと。」
「へぇ。 世の中、便利なものがあるのね。」
「すごいでしょ。 でも、お楽しみはこれからなのよね。」

美空は、スプーンを取り出して、カルピスライムをひと掬い。

「さ、美月、食べてみてよ!」
「食えるかぁっ!」
「えー、これを食べにわざわざここまで来たのに。」

美空は何もためらわず、ぱくっ、とスライムを口に入れた。

「ん。 冷たくっておいしい!」
「冷たいの?」
「ん。 原理は省略するけど、化学変化の過程で熱を失うのです!」
今、筆者が独断で決めた設定である。(ぉぃ

「ほんと、甘くておいしいよ。 美月もどう? 一口だけでも。」
「………本当に、おいしいんでしょうね。」
「ん。 甘くて酸っぱくてぷるぷる。 最近、人気なんだから!」

あまり美空が薦めるので、美月もおそるおそる口に入れてみた。

「あ。 ほんとだ、おいしい、においもちゃんとカルピスだね。」
「でしょう。 ほんとによく出来てるよね、これ。」
美空は、もう一つ水玉風船を取り出した。

「でもさ、これって、よく見ると、まんまコンドームだよねっ!」

美月のスプーンが、止まった。

「わざわざピンクの風船に入れてあるところが、またニクイっていうか、さ。」
「………。」
そっとスプーンをおいて、ハンカチで口の周りを拭う。

「でも一回でこんなに出たら、精力絶倫よね?」
「知るかそんなこと!」
「あたしの記憶が確かなら、そらはこれの1/5くらい……。」
「ひとの彼氏のそんなことまでネットに晒すなぁっ!」


<2幕>

「で、ここで試したいことが、もうひとつあるのよ。」
「どうせ、またろくでもないイタズラなんでしょう。」
「人聞きの悪い。 とりあえず、もう一匹、スライムを探して。」
「………そこにいるじゃない。」
「お、いたいた、あたしのおやつ。」
「まだ食べるの? 太るわよ。 スライム太り。」
「たまに、だもん。 大丈夫大丈夫! 楽しむ時は楽しまなくちゃね!」

美空は、『フルーチェ』の袋を取り出して、封を切った。

「きっとこれでも、おいしく仕上がると思うのよねっ!」

そのまま、スライムの上に袋ごとぶちまける。
ごく薄い青透明のスライムの上に、赤いつぶつぶのフルーチェの素が、たらり。

「あれ? 白くならないね。」
「だって、白は牛乳の色でしょ? なるわけないと思うけど。」
「あ、そうか。」
「美空って、頭がいいのに、時々なんにも考えないわね。………って、あれ!」

美月の指差す先で。
スライムはふるふるふるっと震え、そのまま怒りに燃えるように。

「きゃぁぁっ?」
「巨大化したぁあああっ!」

なんと、いうことだ。
一気に5mほどの高さまで成長したスライムは、赤く光ってふたりを追いかけ始めたのだ!

「きゃぁぁぁっ。」
「いやぁぁぁっ。」
悲鳴を上げて逃げる二人にぴったりくっついて、スライムは走る。
意外に早い。 振り切れない!

「えいっ!」
美空はカルピス風船を投げつけた。
当たった部分が、白くなる。 が。

「だめ! 相手が大きすぎて、効かない!」
「たくさん投げつけたら!」
「あと一個しかないわよぉ!」

「そうだ、美空、魔法!」
美月が思いついて、叫んだ。

「性転換の? スライムにオスメスってあるの? それに意味がないわよ!」
「そっちじゃなくて、もう一つの方! 年齢操作で退行させて、小さくしちゃえば!」
美空の使える魔法は、今のところこの2つだけである。

「ん、分かった。」
美空は一瞬、足を止めかけた。 が。

「ダメ! この距離じゃ魔法が間に合わない!」
「どーすんのよ!」

「そうだ。 美月、オトリになって!」
「ふぇぇっ?」

すこーん。
走りながら、美空は、美月の足を引っ掛けた。

「きゃっ!」
たまらず地面に転がる美月。
その間に美空は一気に距離を取る。

「痛ぁい。 なにするの………。」
即座に立ち上がれない美月に、凶悪なスライムの影が迫る。
もう、逃げ切れない。

「あのね、悪いのはわたしじゃなくてね。」
美月は、スライムの説得を始めた。

「ぜんぶ美空が悪いんだから、あっちを追いかけてくれない?」

スライムはすこし考えていたが、少々、話が難しすぎたようだ。
ぐうんと伸び上がって、そのまま、美月の上に倒れ掛かってきた。

「きゃぁぁぁっ!」

だっぱーん。

……顔を手で隠してかがみ込んだ美月は、べっとりとした体内に、取り込まれた。


「Wake Up。 Get Ready。 Fire!」
やっと、美空の魔法が完成した。

美空の両手から、青い光がほとばしる。
光に包まれて、スライムはみるみるうちに小さくなっていく。
『年齢操作』の魔法で、時間を急速に巻き戻されているのだ。

「えい!」
すかさず、美空は最後のカルピス風船を投げつけた。

命中!
あっという間にスライムは白く染まる。

そして。 ふるふるっと、止まった。

「美月?」
美空の呼びかけに、答えはない。

白いスライムの下から、美月のはいていたスカートが見えるが、足は見えない。

「美月……。 食べられちゃった?」

おそるおそる。 美空は『フルーチェカルピスライム』に近付いて。

「あ。」
かがんで、ブラウスごと拾い上げた。

………美空の魔法で赤ん坊まで退行してしまい、物も言えなくなった、美月を。


「Release。」

しゅるりん。
美空の解除の呪文で、美月は、あっという間にもとの女子高生に戻った。
とんび座りでへたり込んで、放心状態である。

「美月。」
声に応えて、目だけを美空に向けた。

ブラウスの肩が片方はだけて、腰から下はショーツのみ。 靴はなく、靴下が片方。
顔にも体にも、赤い斑点の混じったフルーチェ状の白いジェルが飛び散っている。

美空は、素直な感想を口にした。

「なんだか、『ナマ出し顔射! 美人女子高生すぺしゃる!』 みたいなことになってるわよ?」

「………言いたいことは、それだけかぁっ!」
「あ、ちょっと動かないで。」

美空はそっと美月に近付いて、頬の『フルーチェカルピスライム』を指でとって。
なめた。

「なめるなぁ!」
「だって、すごくおいしいよ、あたしの見込み通り。」
「ぜんっぜん見込み違いだったでしょーがっ!」
「フルーツグミの混じった○○なんて、めったに口に入らないわよ?」
「伏字にせざるを得ないような、グロな描写はやめなさいって!」
「大好きな人のだと思って、女の気持ちでなめると、また格別♪」
「そんなものなめて喜んでるのはあんただけでしょーが!!! もーいやこんなの!」

ちゃんちゃん♪

作者より。
あまりにも下品なオチになったことを、某監査さまと、読んで下さった皆様にお詫びいたします。



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Last-modified: 2006-11-17 (金) 01:54:41 (6387d)