はるか南の青空

『喫茶ブルーコスモス』に掲載した作品。

「美空。 ここどこ? 暑いし埃っぽいし。なんか匂う………」
「ん、バンコク。 タイ王国の首都」
「………なんでそんなところにいるのよ!!」
「タラリラッタッター!! あたしはテレポートの魔法を覚えたのだ!」
「………いつ?」
「本編最終回を参照!!」
「書いてないじゃないのそんなこと!!」
………すまん。 はっきり書いてないが流れ的にそうなの。 天爛さんにばれたからここでは大っぴらに使おうかと。

「お、これこれ! 今回はこれを食べにきたのだ、果物の王様!」
「………なんかそんな話ばっかり」
「あ、おじさん、このドリアンひとつちょーだい! ここで割ってくれる?」
「………きっぱり日本語でよく話が通じるわね」
「英語は度胸と根性だ!」
「だから英語でもタイ語でもないって!」
「気にしない気にしない。 というわけで割ってもらいました!」

「………なに、この匂い」
「う、これはさすがに強烈かも。 35度の気温がさらに臭さを増幅するわね」
「これ、ほんとに常温で食べていいものなの?」
「常温と言うよりむしろヌル燗………」
「うわ、しかもなんだかネットリしてる」

「いい、美月、いっせーのーでで食べるわよ?」
「裏切りっこはナシだからね?」
「いっせーのーで!」

カチリ。 ふたりの歯が鳴った。

「あーっ美月たべてないっ!」
「あんたも食べてないじゃないのっ!」
「だってあたしが気を失ったら美月の表情が見られない………」
「食べたいんじゃなくて、あたしを弄りたかっただけ??」
「いや、その、ちゃんと後で食べるからさ、お先にどーぞ!」
「絶対にいやよ! 逝くときは一緒だからね!」

「じゃあ、今度はゆっくり、ね?」
「………ゆっくり行くと鼻の前にある時間が長くて、それだけで死にそう」
「普通に食べよっか。 そ、芋だ、コレは焼き芋!!」
「………もしも焼き芋だとしたら、確実に賞味期限を過ぎてるわよね」
「なにごとも経験なのだ! さ、行くよ!」

かぷり。

二人は同時に背中を向けた。

「こ、これは………」
「………!!!」
「………でも、きっと味はいいハズ」
「分かるかそんなもの! 匂いだって味のうちよ!!!」
「………吐くわよ? いいわね?」
「きゃ、目が、目がクサさを感じる?!」
「だめ。 あたし戦闘不能」
「あっさり離脱してんじゃないわよ、まだいっぱいあるんだからね!!」
「………食べなきゃダメ?」
「言い出したのはあんたでしょーが! お百姓さんに申し訳ないでしょ!」
「ううう、死んでも命がありますように………」

「しっかし強烈………」
「なんかまだ涙が止まらないわ」
「ああ、ゲップがドリアンだ、もう息もしたくない」
「普通の感覚だと食べ物じゃないかも、あ、好きな方にはすみません」
「あんなもの食べようなんて言い出したのは誰だ」
「あんたでしょーが!!」

「だってあのニオイであの温度でしょ、あれじゃあまるで出したての………」
「美空! ストップ! もうオチが見えたから言わなくていい!」

「………スカトロ好きにはたまらないかもね?」
「言うなって言ってんでしょーがっ!!!」

 
 

** ついでに後日談 **

「美空です、おみやげ買って来ました!」
「美月です。 ほらシルクのタペストリーとナラヤのかばん、ちょっとアジアンテイストな小物入れ、かわいいでしょ?」
「あたしは、これです!」

「なによそれぇ!」
「ん、ちんちん。 合成樹脂製でびみょーに固いの」
「それは見れば分かるわよ、分かりたくもないけど!」

「いや近くの露店で売ってたから、つい。 あ、おっぱいもあったから買ってみたわよ?」
「どういう神経でそんなものが買えるのよ!」

「えーとこのへんでいいかな?」
「飾るなぁっ!」
「こうしてこうしてこう、と」
「絡ませるなぁっ!」

おしまいw


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Last-modified: 2006-11-08 (水) 19:12:16 (6395d)