[[日の国/プリティーサーラ]]

***&aname(s0){シーン0:オープニング}; [#oad7fb54]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/巻き戻し/[[早送り>#s1]]

 あたし、星杖沙良(ほしじょう さら)。夢見小5年胡桃組。
 夏っ! 夏真っ盛り! 雲ひとつ無い空にさんさんと輝く太陽は、あたし達をガンガン容赦なく照り付ける。
 でもね、みんなの夢を守る魔法少女はこんな暑さでは負けないのだ!
 夏の暑さも何のその 魔法少女プリティー・サーラ 今日も元気にただ今到着♪
 
----
CENTER:&size(14){〜 春爛漫・お日様サンサン・夏まっ盛り(ぇ 〜};
CENTER:&size(28){魔法少女プリティー・サーラ};
CENTER:&size(28){春の特番SP};
CENTER:&size(14){『真夏の国のルミナ姫(仮) For コスモス・ブレンド』};
----
***&aname(s1){シーン1:出会い}; [#b45d124f]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s0]]/[[早送り>#s2]]

 夏休みのある日、あたしとアッちゃんの二人は町の中を歩いていた。
 なぜかって? それは夏の国からやってきたって言うお姫様を探す為。夏の国から抜け出してきたルミナ姫を早く見つけて帰らせないと大変なことになるんだって。

「暑い」

 服の襟首を摘まんでパタパタさせつつ、ギンギンに照りつける太陽に愚痴を言ったのは夢刃アルト(ゆめば あると)こと、アッちゃん。
 これは内緒だけど、あたしを魔法少女に任命した夢の国の使者だったりする。

「そりゃ、夏だもん」
「暑い暑い暑い暑い暑い、あっちぃ〜!!」
「そだね、夏っぽくて良いよね♪」

 そう言えば、アッちゃんはなぜだか知らないけど、いつも男の子みたいな言葉使いをしている。綺麗系の容姿に全くあってないんだけど、それかなぜか男の子に受けていたりするから不思議。
 ……アッちゃん自身は気付いていないようなんだけど。

「……、サーラは暑くないのかよ……」
「ん〜、確かに暑いけど。 夏ってこんな物だよ?」
「それで納得できるおまえが信じらんねぇ」
「アッちゃんもそんなに暑いなら、お母さんが用意してくれた服に着替えてくれば良かったのに……」

 アッちゃんは夏なのにも関わらず、いつもの身体のラインを隠すような厚手の長袖の上下を着ている。折角あたしより女っぽい体つきしてるのに勿体無いと思う。

「いやだっ。あんな恥かしいの着るぐらいなら死んだ方がましだっ!」
「え〜、そんな事無いよ。あたしのとお揃いだからアッちゃんも絶対似合うはずだよ? あたし、あの服着たアッちゃん、絶対可愛いと思うなぁ」

 あっ、ちなみにあたしは淡い緑のサマードレスに麦わら帽子。帽子に付けた白くて長い鳥の羽がワンポイントなの♪
 お母さんがアッちゃん用に用意した桃色のサマードレスのセットとは色違いのお揃いなんだよ。

「だから余計に嫌なんだっ!」
「むぅ。絶対似合うのにぃ〜」

 なんだかんだ言いながらも二人して町を歩く。もう1時間ぐらい歩いてるのに目的の人物は見つからない。
 まあ、待ち合わせしている訳じゃないから当たり前と言えば当たり前なんだけど……。

「あっ」
「なんだ!? ルミナ姫が見つかったのか?」
「違うよ、レイお兄ちゃん」
「なぁんだ、レイジか……」

 なぁんだとは何よ、なぁんだとは! レイお兄ちゃんに失礼じゃない!!

「よっ、サラちゃんにアルちゃん」
「こ、こんにちは。レイお兄ちゃん」
「おっす、レイジ」
「こんな所で会うとは奇遇だね」
「は、はい。そうですね♪」
「二人ともこんな所で何してんだ。って、アルちゃん。暑くないのか?」
「暑いに決まってんだろ?」
「じゃあ、何でそんな服着てるんだい?」
「これ以外は着たくないっていうんですよ? 折角お母さんがあたしとお揃いの奴を用意してくれたのに……」
「ははっ、そりゃ似合いそうだ」
「でしょ?」

 うっさい。そう小さく呟いてからアッちゃんは話を変えた。

「そ、そんな事よりレイジは何でこんな所にいるんだよ?」
「人と待ち合わせしてるからそこへ行く途中。サラちゃん達は?」
「わたし達、お姫様探してるんです」
「お、おい、サラっ! 余計な事言うんじゃ……」

 アッちゃんが慌ててあたしの口を塞ごうとしてけど既に遅く、逆にアッちゃんが制止の言葉を言い切る前にレイお兄ちゃんが言葉を被せた。

「お姫様? そういえば公園の方でそれっぽい服を着た女の人がいたよ?」
「えっ、ホントですかっ!?」「ホントかっ!?」

 ほぼ同時にあたし達が言った。

「ホント、ホント。多分今ならまだいるんじゃないかな」
「よし、行くぞ。サラ!」
「えっ、でもぉ」
「でもじゃない! レイジも待ち合わせがあるんだろ? 時間っ、大丈夫なのかよ?」
「おっと、早く行かないとスズが怒るな。じゃあな、二人とも。日射病に気をつけるんだよ。」
「はぁ〜い♪」

 あぁ〜、レイお兄ちゃん行っちゃった……。アッちゃんがあんな話振るから……。
 この前もそうだったけど、もしかしてアッちゃんってレイお兄ちゃんのこと嫌い?

「ほら、とっととルミナ姫を探しに公園へ行くぞ」
「はぁ〜い」

 反対側へ走り去っていったレイお兄ちゃんに後ろ髪引かれつつ、あたし達は公園へ向かう。
 公園に付くとちょうど噴水の方から柄の悪い男の声がした。
 どうやら女の人相手に強請りをしてるみたい。

「ねえちゃん、金、持ってそうだなぁ。」
「……」
「ちょいっと、おいらに金を分けてくんないかい?」
「……」
「シカトしてんじゃねぇ。ええから跳んでみぃ!」
「……」
「このあまっ! なんなら身包み剥いてもいいんやぞ!?」

 無言を貫き通す女の人に、とうとう声を荒立てるチンビラ。って、アレっ!?
 あの女の人の服装って、もしかして……

「……わたしはルミナ姫。このまま去っていただけますか」
「なんや? ねえちゃん。暑さで頭いかれたか?」
「……わたしはルミナ姫。夢を失い荒れ果てた母国を救うために、異世界からやってきました。今は夢をかなえる魔法が見つかるまで、このままにさせていただけますか」
「わ、わかったわかった。もうええわ。相手してられんわ。」

 ルミナ姫の雰囲気に飲まれ、チンピラはそのまますこすこと逃げ去って行っちゃった。うわぁ〜、格好いい。あたしもあんな女の人になりたいな♪
 とか何とか考えてる間に、アッちゃんがルミナ姫の元へ向ってる?
 あっ、待ってよ〜。

「ルミナ姫っ! 待ってくれ」

 アッちゃんの呼びかけにルミナ姫が振り返る。

「確かに、私はルミナです。でも貴方たちは?」
「あたし、星杖沙良です。こっちが……」
「夢刃アルト。でも、夢の国の関係者、と言った方かいいかもな」
「……、話を聞きましょう」

「夏の国の女王に頼まれて、あなたを連れ戻しに来た。……と言っても素直に帰る気はないんだよな?」
「わたしは母国を救うために来ました。今帰るわけには行きません」
「そういうと思った……」

 手を広けて肩をすぼめるアッちゃん。なんか似合ってない……。(笑

「……ねぇ、アッちゃん。あたし達で協力できないかなぁ?」
「……1週間だ。それ以上は待てない。」
「えぇ〜、たった1週間」
「仕方ないだろ。1週間経って姫が帰らなきゃ、夏が終わらないって事になりかねないんだ」
「うぅ、わかったよぉ。そうなっちゃたら大変だもんね……」
「ルミナ姫もそれて良いか?」
「分かりました。お心使い感謝します」
「じゃあ、その服のままじゃ、また絡まれるだろうから一旦家に戻ろう。明良さん、沙良のお母さんなら、なんか用意してくれるだろうし」
「だね♪ それにルミナさんを家に泊めてくれるとも思う。」
「……、ほんとにいいのですか?」
「うん♪」
 
***&aname(s2){シーン2:悪夢}; [#e8a860e7]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s1]]/[[早送り>#s3]]

 気が付けばルミナは城にいた。
 窓から顔を覗かせれば、そこに広がるのは、故郷の、真夏の国の、在りし日の姿。
 青く晴れ渡る空に、さんさんと輝く太陽。
 からりとした空気が肌を包み、海から微かに潮の香りが私を爽やかな気分にさせてくれる。
 山や森は深緑に染まり、町は活気に、人々の生気に溢れていた。

 しかし……

 それは、黒い服の少女と大きな牛人型の魔獣の出現によって塗り潰されてしまう。
 黒く淀んだ空と、際限なく大地を熱する太陽に。
 海からの潮風も途絶え、湿気が高く不快を募らせるむっとした空気に。
 山や森も枯れ木の茶色に染まり、気付けば町からも活気が消え失せた。

 黒い服の少女はルミナに言う。
 人々の夢を奪ったと。夢をなくした世界は滅びるのだと。

 ルミナは黒い服の少女に返す。
 夢を返して下さいと。どうすればこの世界を救えるのかと。

 そこまではいつもと同じ、何ひとつ変わらぬくり返し。
 でも、ここからは違う筈。昨日までと違うから。新たな希望が見つかる筈。

 少女は一言応えた。
 ……無理、と。夢のない、夢の叶わない世界に生きる術はないと。

 ルミナの希望は、その一言で砕かれてしまった。

 あなたが言うから、救いの力があるというから、地球(テーラ)へ来たのに……

 そうね、あなたはあなたの願いどおりに、我が王の狙いどおりに、此処へ来た。
 そして箱を開いた。叶わぬ夢を叶える為に、絶望の箱だと知らずにね。

 ルミナは絶望に震えた。

 なんて事をしてしまったの。
 夢に裏切られなければ、夏の国が滅びることはなかった。
 夢を信じなければ、夢に裏切られることはなかった。
 夢を見なければ、夢を信じることもなかった。
 そもそも夢を見なければ、真夏の国が滅ぶ所を見ることもなかった……。

 そう、夢がなければあなたが苦しむことはなかった。すべて夢が悪いの。
 だから、ね、我が王のために……、夢の絶望のために……、死んで?

 黒い服の少女の言葉に、その冷たい笑顔に、そして夢への絶望に……、ルミナは身動き1つできなかった……。

「待ったぁ〜!!」
 不意に声が聞こえる。心の闇を切り裂くようなとてもとてもとても明るい声だ。
 ただ見るしかできなかった私、その心を溶かす、そんな声。
 声がした方に目を向けると、そこにいたのは……

 沙良、ちゃん?
「真夏の国を守るためっ 魔法少女プリティー・サーラ ただ今到着♪」
 沙良ちゃん、ううん、サーラがわたしに向かって笑顔を向ける。

「もう遅いわ、サーラ。この娘の夢は既に枯れ果てた。この枯れた夢の世界であなたはこの子に勝てるのかしら?」
 不適に笑う黒い少女が巨大な魔獣を消しかける。
「行けっ! バクラム《モー・ショーグン》。この夢ごとサーラをやっつけておしまいっ!!」
「モォ〜ショ〜!!」
 叫び声と共にモー・ショーグンと呼ばれた化け物がサーラに襲い掛かる。

「そんな、こと、ないっ、あたし、絶た、いに、負けな、いよ。」
 モー・ショーグンの攻撃を避けるサーラ。
 右へ左へ、モー・ショーグンの斧を避けるのに精一杯で言葉も途切れ途切れになってしまう。

 やはり無理なのでしょうか……

 そうルミナが思った瞬間、モー・ショーグンの斧がサーラに当たった。
「きゃっ」
 その勢いでサーラは外まで吹き飛ばされ、地面に打ち付けられてしまう。
 あまりの衝撃で土ぼこりが舞い上がりサーラの姿を覆い隠す。

 だが、それでも、サーラはその土埃から姿を見せ、呪文を唱える。
「サーチス・ラーキル・サーラキス!!」
 杖から放たれたその魔法は、とても柔らかな光を放ちながらモー・ショーグンに向かって飛んで行く。
 しかし。
 しかし、それも、モー・ショーグンの咆哮の前にかき消され……

 それでも、サーラは諦めず立ち向って行く。何度吹き飛ばされ、何度地面に打ち付けられても。

 恐怖と絶望で何もする事が出来まないルミナを、ルミナの夢を、ただ守る為に。

 苦戦の末、とうとう追い詰められてしまったサーラに、モー・ショーグンが斧を振り上げた!!

 もうダメだ。
 心のそこからそう思ったとき、ルミナは思わず声を大にして叫んでいた。

'''&size(14){''「サーラっ!! 逃げてっ!!!!!」''};'''

 ――――………‥‥・‥‥………――――

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
 自分の叫び声で起きてしまったわたしは肩で息をしていました。
 と、とりあえず、落ち着かないと。
 そう思い、わたしはまだドクドク言っている心臓を治めるため、軽く深呼吸します。

「すぅ〜。はぁ〜。すぅ〜。はぁ〜。」

 と、深呼吸しながらですが今の状況を説明しときましょう。

 沙良ちゃん達と出会ったあと、沙良ちゃんの家で服をお借りしました。
 すぐにわたしのサイズにあったの服が出てきたのでとても驚いたのを覚えています。
 着替えたあと、わたしと沙良ちゃんは、暑いからと言って外に出たがらないアルトちゃんを置いて『夢をかなえる魔法』を探しに出かけました。ですが結局、その日は見つかりませんでした。
 わたしは本当に泊らせてもらって良いのか明良さん(沙良ちゃんのお母さん)に確認しましたが「アルちゃんもいるから大差ない」って言ってくれた事もあり、ありがたく泊めさせていただく事にしました。
 美味しいご飯を頂き、夜は沙良ちゃんの部屋に布団を敷いていっしょに寝る事になりました。

 っと、さっきのわたしの声で沙良ちゃんを起こしたのではないでしょうか。心配になり、辺りを見回してみました。すると一緒に寝ていた筈の沙良ちゃんの姿がありませんでした。
 どこ行ったのでしょう……。
 少し気になったわたしは沙良ちゃんを探してリビングのある1階へ下りてみる事にしました。
 するとどうでしょう、台所の電気がついており、そこに人が居る気配がします。それも二人。
 沙良ちゃんかな? ならもう一人は? そう思って、恐る恐る覗いたわたしが見たものは……

 沙良ちゃんとアルトちゃんでした。
 いえ、ドロボウさんとかに出てこられても困るんですけど。
 
***&aname(s3){シーン3:夜の茶会}; [#taec5ac0]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s2]]/[[早送り>#s4]]

 俺とサラはこれからどうするか相談する為に台所に下りた。

 今回はかなり危なかった。
 しかし、ルミナ姫が途中で起きてくれたお陰で事無きを得た……。

「アッちゃんはナニ飲む?」
 バクラムに襲われている悪夢から覚めるなんて、かなりイレギュラーな事だ。
 だが今回はそのイレギュラーのお陰で助かったのだ。

「コーヒー」
 さすがは真夏の国の王女と言った所か。
 まあ、どちらにしろルミナ姫に感謝しないとな。

「いつものように、佐藤とミクル多めでいいよね」
 しかし、次回も……、とは期待はできない。

「おう、任せた」
 たぶん、ルミナ姫にかかる精神的な負担はかなりあるだろう。

「ちなみに、佐藤じゃなくて砂糖、ミクルじゃなくてミルクな」
 それに今回失敗したから、次回は万全を期して、直接来るかもしれない。

「あ、あたし、きちんと言ったもん!」
 そうなった場合、更にルミナ姫への負担が増えるハズだ。

「佐藤とミクルって」
 言えてねぇじゃん……
 それにアクセント違いな佐藤はともかくミクルって何だ? 禁則事項か?

「あ、あの、私も何か貰っていいですか?」
 不意にサラ以外の声がした。
 自然とそちらに目が行く。

「あれっ、ルミナさん、どうしたの?」
 あんな夢見てすぐに寝直せるはずないだろ。

「えっと……、少し嫌な夢見てしまって……」
 ほらな。しかし……

「そろそろドアの影から身体も出したらどうだ」
 そう、今の今まで、ルミナ姫はドアの影から顔だけ出してのぞき見るように話してた訳だ。

「あっ、これは失礼しました」
 案外、ルミナ姫も抜けた所があるかも知れないな。

「じゃあ、そんなルミナさんにはコジローさん直伝のハープティーをご馳走してあげる」
「コジローさんって?」
「フリーカメラマンのコジローさん」
「はあ、そうなんですか……」
 サラの要領を得ない回答にハテナマークを浮かべまくるルミナ姫。

「それじゃあ、分からないって」
 俺は苦笑を交えながら、すでに出されていたコーヒーをすする。

「うん、うまい」
 男だった時ならば甘すぎて飲めた物じゃないが、今の俺にはこの位の甘さが好みだ。

「いつも思うがサラはこういう飲み物だけはうまいよな。このままでも喫茶店に出せるんじゃないか?」
「そっかなぁ、インスタントだしそんな事ないと思うけど……」
 いや、それでもサラの入れるコーヒーとかハープティーは本当にうまい。
 湯の熱さや、インスタントコーヒーの量、ティーパックを出す時間とか……
 それに砂糖にしてもミルクにしても自分で入れた時よりしっくり来るから不思議だ。
 甘いのが苦手なサーラの親父さんからも称賛はあれ、文句を言われている所は見た事ない。
 もしかして、そういう才能をあるのかも知れないな。

「そろそろかなっと。はい、ルミナさんできたよ」
「あ、ありがとう」
 ティーパックを取り出したばかりのハープティーを受け取ったルミナ姫は不意にカップを鼻に近付ける。

「あっ、いい薫り……」
「カモミールのハープティーだよ♪ 薫りもそうだけど沈静効果があってぐっすり眠れるから夢見が悪いときには最適♪」
 コジローからの受け売りを物知り顔でいう。

「そうなんだ……」
 まあ、全く違った事を言ってる訳じゃないし、実際に説明する事で効果を高める事が出来るのだから別に何も言うまい。
 ……、そこら辺わかってて言ったとは思えないが。

「本当においしい……。インスタントとは思えない……」
 予想外の美味さに目を丸くするルミナ姫。
 気付けばそんなルミナ姫を横目にサラも自分のカップに口を付けていた。
 いつ用意したか気付かなかったが、たぶん好物のアップルティーだろう。

 それから暫く、それぞれの飲み物に口を付けつつ、世間話をした……。


 互いに自身の飲み物を飲み終わり、そろそろ布団に戻ろうとした矢先のことだ。

「あっ、そだ、明日プール行こっ♪」
「はい?」
 
***&aname(s4){シーン4:四角くて大きな水溜り}; [#o0f86d27]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s3]]/[[早送り>#s5]]

「はぁ、しっかし何で俺はここにいるんだ?」

 今日は昨日の翌日。当たり前? ……、当たり前だよね(笑
 それにしても……

「はぁ……」

 あっちゃんは今日だけでもう一ヵ月分になったかも知れないため息を再び吐く。

「あっちゃん、諦め悪いよ?」
「しっかしだな、なんでいきなりプールなんだ?」
「えっ? この週刊マッチに載ってるミスティ−・キーリの占いで、大きな物と四角い物と水溜りが吉って……」
「あっ、だからプールなのね。」
「ピンポ〜ン♪ ルミナさん、あったり〜♪」

 うんうん、大きくて四角い水溜りって言えばプールだよね♪

「ふ〜ん。……って、それ、最新号か?」
「うん♪ そうだよ」
「なら、あとで見せてくれよ。俺、守岡ミキチ先生の大ファンなんだ」
「もしかして『たれなづなな日常』? あたしもそれ好き」
「おう、面白いよな。」
「うん♪」

「じゃあ、着替えてこよっか」
「おう。行って来い」
「うん、更衣室」

 あたしはアッちゃんの手を引く。でも……

「おう。だから言って来い」
「……アッちゃん、泳がないの?」
「お、おう」
「……なんで?」
「なんでって……。べ、別に恥かしいんじゃないからなぁ」
「恥かしいって、アッちゃん、のお母さんが用意した白のワンピースだよね?」
「……お、おう」
「全然似合うと思うのに、……もしかしてスク水の方が良かった?」
「余計、恥かしいわっ」
「むぅ〜、学校じゃ何時も着てるじゃない……」
「いつもじゃねぇ! 水泳の授業中だけだっ!!」

 その時、ルミナさんがあたしに横から小さく声を掛けて来ました。

「……もしかして、およげないとか?」
「……ううん、水泳の時間とか水の中で生き生きしてるもん」
「ふ〜ん」

 そう呟くと、ルミナさんは意地悪そうな顔を少しあたしに見せてからアッちゃんに顔を向けました。そしてわざとらしく手を打って……

「あっ、もしかしてアルトちゃん、泳げないとか」
「へっ?」

 ルミナさんのその言葉にアッちゃんが、何のトコか分からず目を丸くする。

「ううん。ちが……」

 そう言いかけたあたしに、ルミナさんがウインク。あっ、もしかして……

「そっか〜、アルトちゃんって意外にもカナヅチだったんだ。」

 ルミナさん、ソレ。すっごいわざとらしいですよ?

「ちが……、俺はカナヅチじゃ……」
「うん、カナヅチじゃ仕方ないよね。うん、無理して泳がなくてもいいよ。うん」
「だから、カナヅチじゃないっ!」
「えっ? でも、泳がないのよね?」
「……おう」
「こんなに暑いのに?」

 そう言ってルミナさんは手をパタパタする。うわっ、わざとらし〜w

「う゛っ」
「こんなに暑いのに泳がないってことは……、泳げないって考えるしか――」
「あぁ〜〜 分かった、分かった。俺も泳げばいいんだろっ!!」
「泳げないのに無理しなくてもいいのよ?」
「だから、俺はカナヅチじゃねぇっ!」

 あぁ、アッちゃん。怒って先に更衣室行っちゃった。
 ま、でも――ルミナさんがあたしに、Vサイン。あたしもお返しにピース。そして二人でハイタッチ。やった♪

***&aname(s45){シーン4.5:更衣室の中で}; [#bdd80ad7]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s4]]/[[早送り>#s5]]

 更衣室に入って、アッちゃんを探す。あっ、いた。端っこの方に隠れる様に着替えてる。むう〜、そんな事したら余計見たくなっちゃうじゃない♪

「え〜い」

 むにゅ。……なんか信じられない感触が……

「……うん、もう一度。え〜い」

 むにゅ。……うん、気のせい気のせい。もう一度。

「え〜い」

 むにゅ。む〜

「ちょ、沙良? あっ、ちょ、やめっ、それ、駄目ぇ」
 むにゅ、むにゅ、むにゅ。
「む〜」
 試しに自分のを揉んでみる。……揉めない(泣
 気を取り直して触ってみる。ぺたっ、ぺたっ、ぺたっ……
「うう〜」
 アッちゃんのを揉む。むにゅ、むにゅ、むにゅ。
 自分のを触る。ぺたっ、ぺたっ、ぺたっ。
「うぅ〜、あるぅ〜」
 むにゅ、むにゅ。
「うぅ〜、ないぃ〜」
 ぺたっ、ぺたっ。
「あるっ、あるっ、あるっ」
 むにゅ、むにゅ、むにゅ。
「やっ、ちょっ、だっ」
「ないっ、ないっ、ないっ」
 ぺたっ、ぺたっ、ぺたっ。
「あっ、それっ、やっ」
「あるっ、ないっ、あるっ、ないっ、あるっ、ないぃ〜!!」
 むにゅ、ぺたっ、むにゅ、ぺたっ、むにゅ、ぺたっ。
「ちょっ、沙良っ、ホントっ、駄目、もうっ、やめっ、やめいい!!」
 アッちゃんが肩で息をしている。
「はぁ、はぁ、俺はもう行くからなっ!?」
 あう〜、ないぃ〜
「沙良ちゃん?」
 落ち込んでるあたしにルミナさんが声を掛ける。
「うぅ〜。アッちゃん、また胸大きくなってた……」
「そ、そうなんだ……。うん、でも、沙良ちゃんもこれから大きくなるよ、うん」
 あたしは、目を上げルミナさんを見上げる。
「うう〜、ルミナさ〜ん」
 そしてルミナさんの胸元に飛び込み……
「……ある」
「えっ」
 その一言で固まったルミナさんの胸を……
「あるっ、あるっ、あるっ、あるっ、あるっ、ルミナさんも、あるぅ〜〜〜〜」
「あっ、ちょっ、沙良ちゃん、やめっ、ホントっ、駄目っ……」
&color(#888888){『って、サラさん?! 止めて、止めてってばぁ〜〜〜!』
『だって、臨場感あった方が……』
『そんな物、要りませんっ』
『あっ、何ならるみなちゃんも、あたしの揉んでみる?』
『うっ』
『きゃっ、るみなちゃん、赤くなちゃったかぁいい♪』
『と、とにかくっ、ぼ――じゃなくてあたしは揉みませんから!!』
『うぅ、それってやっぱり、あたしに胸がないから?』
『はい?』
『暗にあたしに胸ないって言いたいんでしょ?! るみなちゃんは』
『ちょっ、それちがっ……』
『なら揉んで……』
『えっ、あっ、うっ、いや、やっぱ……』
『やっぱり、小さいから……』
『だからぁ〜〜』
『ちょっと、二人ともそろそろまじめにやってくださいよ〜』
『は〜い』
『え……?』
『ほらほら、るみなちゃん。さっさとしないと次のシーン始まっちゃうよ〜?(笑』
『……うぅ。僕、この人には勝てないかもしれない……orz』};

***&aname(s5){シーン5:向日葵}; [#caf9fe7c]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s4]]/[[早送り>#s6]]

 その日、泳ぎの練習をしに市民プールへと来ていたボクは、クラスメートの星杖さんと夢刃さんに出会った。
 準備運動をしている時にボクを見つけた二人の驚いた声が聞こえてきたんだ。
「おい、向日じゃないのか?!」
「あっ、ホントだ。アオちゃんだ」
 声のした方へボクが顔を向けるとそこには前述の二人ともう一人、綺麗なお姉さんがいた。
 夢刃さん曰く、夢刃さんの親戚の従姉妹のおねえさんでルミナさんと言うらしい。
 とても綺麗なお姫様みたいな人で清楚な白い水着がとても似合っていた。
「ありがとう。葵ちゃんもその水着似合ってて可愛いわよ」
 嬉しかったので顔を赤くしながらお礼を言っておいた。
 まあ、ボクが今来ている水着は、ボクが持つ唯一の、つまり学校指定の水着だったから社交辞令なんだと思ったけど ―― 
「いや。アレ、たぶん素で言ってるから」
 と、夢刃さんに言われてしまった。そっか、ルミナさんは天然さんなんですね。

「でもこんな事でアオちゃんに会うなんて意外だね」
「どうして、こんな所へ?」
 星杖さんの質問に続き、夢刃さんもボクに訊いてきた。
 そりゃ、誰だって気になるとは思う。
 ''水恐怖症''で''泳げない''ボクがプールに来ているのだから。
「えっと、実は……」
 ボクは二人に促されるがまま話をした。

 数年前、ボクは友達と海に行った事がある。
 その頃はまだ泳ぎを覚えたばかりだったから友達と二人楽しみにしていたのを覚えている。
 その友達に足の届かない所から呼ばれ、そこへ行こうとした時、足を吊り、そして、溺れた。
 そう、それ以来ボクは水恐怖症の為に泳げなくなり、友人はその事に負い目を感じてボクから離れて行った。
 ボクはどうにか仲直りしたいと練習して、足の付く所までなら水に浸かれるようにはなったんだけど、それでも両足が離れてしまうと途端にパニクってしまって……
 でも、その友だちが夏休み上げに引っ越してしまうから、その前に泳げるところを見せて、もう気にしなくて良いんだよって言ってあげたくて。
 じゃないと、あの子もボクもずっと後悔する事になるだろうから

「だから、練習しているんです」
 そこまで言ってボクは立ち上がるとプールに近寄り水に足を付けた。
 途端に身震いするけど、大丈夫と自身に言い聞かせて、恐る恐る水の中に入った。
 気を抜くとすぐに恐怖に飲み込まれそうな心。でも、それを奮い立たせるようにプールの中でしっかりと足を踏みしめた。

***&aname(s6){シーン6:折れない心}; [#l4e2bc54]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s5]]/[[早送り>#s65]]

 私は、葵ちゃんの真っ青な、恐怖の中でなおも笑おうとするそんなガチガチの引きつった笑顔を見て。
「なんで……」

 疑問が口をついたのです。

「なんで、そこまでして…… 頑張っても間に合わないかもしれないのに、なんでそこまで頑張れるの……?」
 夢に絶望しかかっている私には信じられない光景。

「たぶん、後悔したくないからだと思う。あたしだっておなじだもん」
 そう一言残し沙良ちゃんは葵ちゃんの方へかけて行きました。

「アオちゃ〜ん、あたしも手伝う」
「いいの? ありがと」
 後悔したくないから……?

「まあ、なんだ。しないでいるより、出来る事をやり切ってそれでも駄目だって方が後悔は少ないって事だ。あと、一人で駄目なら他の人に頼ればいい。例え1%に満たない可能性でも、数人集まれば二倍三倍と増えていくんだからさ。ほら、あいつらみたいに」

 そういうアルトちゃんの目線の先には、沙良ちゃんに手を引かれてバタ足する葵ちゃんの姿が……

「だから、ルミナ姫も無理だと思ったら、俺らを頼れよ? 出来る限り協力するからさ」
「はい」

 私が頷くのを確認するとアルトちゃんは沙良ちゃんの方に視線を向けて
「ま。あのお節介焼きは頼んでなくても、無理やり手伝うと思うけどな」

 そういうアルトちゃんの顔には笑みが浮かんでいました。

***&aname(s65){シーン6.5:幕間}; [#pb5c9267]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s6]]/[[早送り>#s7]]

 その後、暫くプールで遊んでいた、というか日向の練習につき会っていた俺達は、数分の休憩を取るためプールサイトに上がっていた。

「アオちゃん、結構泳げるようになったね♪」
「それは、星杖さんが手をもってくれてるから……」
「ううん、そんなことない。アオちゃんの努力の結果だよ。この分だと今日中に泳げるようになるかも」
「だといいなぁ……」

 ちなみに今ルミナ姫はいない。ジュース買いに行ってまだ帰ってきていない。

「でもルミナさん、遅いね」

 そう言えば遅すぎる気がする。

「迷子になってたりw」
「いや、それは、さすがに……」

 ないだろうが……なんか嫌な予感がする。

「探しに行くか」
「あっ、あたしも行く」

 俺とサラは、ルミナ姫が戻ってきた時の言付けを向日に頼みその場を後にした。

 それから少し辺りを探したらすぐにルミナ姫は見つかった。
 だが、そのルミナ姫の前には敵の魔法少女バクラム・サマナが立っていた……

***&aname(s7){シーン7:再び}; [#d6324ccd]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s65]]/[[早送り>#s8]]

「あ、あなたは夢に出てきたっ!?」
「私は虚夢王の使いバクラム・サマナ。もう逃がさない」

 サマナはルミナさんにステッキを向けると呪文を唱える。
 あたしは咄嗟にルミナさんに向って叫ぶ。

「ダメっ! ルミナさん、逃げてっ!!」
「逃がさないと言った筈。ドリーム・イン・サマナ ドリーミング・デッド 我と来たれ、バクラム《モー・ショーグン》!」

 呪文を唱え、黒き光となったサマナはルミナさんにぶつかり、消えた。
 そして、残ったのは倒れたルミナさんだけだった。
 いつもの様に夢の中に潜ったんだ! 早く追わないと!!

「ドリーム・イン・サーラ ドリーミング・ガード 夢守りの少女、サーラが願う!!」

 あたしは呪文を唱え、白い光と化す。
 そしてルミナさんの額に開かれた光のトンネルに吸い込まれて行く。
 光のトンネルを抜けると、いつもの通り戦闘服に着替えていた。

 着いた先はルミナさんの夢の世界。
 けど本来の美しい世界ではなく、虚夢に侵された荒廃とした世界。

「急がなきゃ」

 そう呟き、魔法で翼を出したあたしはルミナさんのいる城の方へ飛んでいった。



 城の中で幾度と見た夢が繰り返される。
 でも、ここからは違う筈。昨日までと違うから。新たな希望が見つかる筈。

 バクラム・サマナが一言応える。
「……無理。夢のない、夢の叶わない世界に生きる術はない」
「そんな事ないっ」
 私は確信を持ってその答えを否定する。

 夢はまだある。私は確かに絶望の箱を開けたのかもしれない。そして確かに私の中に絶望が広かった。
 でも、絶望だけじゃない。希望も確かにそこにあった。
 一〇八の絶望に対してたった一つの希望だけど、口に出すことも出来ないちっぽけな希望だけど。だけど、あの子達が教えてくれた。どんな小さな希望でも諦めずに頑張ればいつかは叶うって。
 だから……、だから、だから、だからっ!!

「私は諦めないっ!!」
 私は決意を口に出してサマナを睨みつける。
「……しつこいお姫様。……もういい。バクラム《モー・ショーグン》、やってお仕舞いなさいっ!!」
「モォ〜ショ〜!!」
 叫び声と共に《モー・ショーグン》が襲い掛かって来る。
 振り上げられた斧を避けきれず、壁に叩き付けられてしまいました。

「くっ」
 私は身体をくの字にしてしゃがみ込んでしまった。息が出来ない!
「まだよ、まだ殺しはしない。」
 バクラム・サマナが冷酷に呟きゆっくりと近づいてくる。

「だって、あなたには手伝って貰わないと」
 一歩……。

「だからね……」
 また一歩……。

「だから、あなたには絶望してもらわないとね?」
 沙良ちゃん!アルトちゃん! 助けて!! あたしは心からそう願いました。


 あたしが着いた頃、ルミナさんはサマナに追いやられている所だった。
 危ないっ!! あたしは咄嗟に城の窓から飛び込む。
「待ったぁ〜!!」

 不意に響く明るい声。サーラだ。サーラが来てくれたんだ。
 声のした方を見上げる。もちろんそこには予想した通りの人物がいた。

 狂った太陽を背にあたしは叫ぶ。
「夢を夢見て夢見頃 でも夢見るだけが夢じゃない
 夢叶えるため希望(ゆめ)を持て 努(ゆめ)を以って夢を成す
 夢見る心とその努力 努々忘れる物じゃない
 魔法少女プリティー・サーラ あなたの夢を守る為 夢見る翼でただ今到着♪」
 シャッキーン。ポーズも決まり絶好調♪ 今度は勝てる、絶対に♪

 ……って、なんでみんな唖然した顔で見てるのっ!?
 い、いいもん、勝手に進めるもん(うじうじ

 サーラが私の元へ降り立つ。
「ルミナさん、大丈夫?」
「えっ。あっ、はい」
 サーラの登場台詞に呆然としていた所に差し出された手。
 私が手を取ると、身体がふわりと浮き上がった。
「えっ?」

「とりあえず、逃げよ♪」
「えっ? えっ!? えぇっ!?」
 ルミナさんの手を取り、入って来た窓から飛び出した。
 言っておくけどルミナさんを安全な場所まで逃がす為だよ?

 私とサーラは町の外れに降り立った。
 確かにここなら辺りに建物も少ないから、瓦礫に潰されることもないかもしれない。
「んじゃ。あたし、行ってくるね。」
 そう言って、サーラは追いかけて来た《モー・ショーグン》に立ち向って行きました。

「今度は負けないよ!」
 あたしは《モー・ショーグン》に蹴りを食らわす。
 でも、効果があまり無いっぽい。う〜ん、どうしかものか……。

 そんなことをのん気に考えていたあたしに《モー・ショーグン》の斧が襲いかかる。
「って、うわっ、ちょっとっ、考え事っ、してるんだからっ、待ってよっ!」
 斧を振り回して反撃してきた《モー・ショーグン》に思わず文句を言うあたし。
「待てといわれて待つ奴なんていない。」「モォ〜ショ〜!!」
 それもそうだけど……

「登場のっ、ときっ、待って、くれたっ、じゃない!」
「アレはあまりにもあんたの台詞が間抜けだったから呆れてただけよ。」「モォ〜ショ〜!!」
「間抜け、って、そんな、事は、無い、もん!!」
「どっちでもいい。やれ、《モー・ショーグン》! そのままサーラを叩きのめしてお仕舞い!!」
「モォ〜ショ〜!!」

 《モー・ショーグン》の一撃に吹き飛ばされるサーラ。
 民家の壁にぶつかり地面に落ちる。それでも、ふらふらになりながらも、立ち上がりなおも立ち向かう。
 デジャブ。昨日見た夢と重なり思わず目を背ける。
 応援しか出来ない自分が歯痒くって。守られているだけの自分が悔しくて。
「私に、私にも戦う力があれば ―― 」
「あるさ。君がそれを願うなら」
「えっ」
 返ってくるとは思わなかった返事に目を見開くもそこにはもう誰もおらず。
 答えた声の主らしい少年は、既にサーラの方へ向かって駆けていた。

***&aname(s8){シーン8:ルミナ姫、立つ}; [#n2cbcdac]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s7]]/[[早送り>#s9]]

「はぁはぁ」
 何度も壁に叩き付けられ、もうふらふらなあたしに無慈悲にもモー・ショーグンの斧が振り下ろされる。
 もう駄目っ。そう思ってしまった時

  ―― カキーン

 乾いた金属音が。
 恐る恐る目を開けるとそこには一本の見慣れた銀のナイフ。
 このナイフ。もしかして ―― 
 はやる気持ちを抑えてナイフが飛んできた方へ視線を向けると、期待していた人物を見つかった。
「夢見る星を護る者 夢皇子アルティオン。ここに登場」
「アルティオン様!!」
 アルティオン様があたしの呼び声に答える。
「サーラ、大丈夫かっ!」
「はいっ、大丈夫っ。元気満タンですっ♪」
 だって、アルティオン様が来てくれたんだもん♪ コレで勝利確定のお約束♪
 疲れてなんていられない♪
「良し今だ ―― 」
 わかってますって、敵が怯んでいる隙にあたしが止めを指すだよね。
 あたしはステッキを取り出し、必殺技を叫ぼうとしたけど ―― 
「ルミナ姫っ! 強く願うんだ。 ここは君の夢の中。君が強く願えば奇跡は起きる」
 取り出したステッキの置き場がなくなってしまった……。

 夢王子の言葉を受け、私は祈った。
  ―― 力を、力をください。私の夢を、国を、民を守る為に。そして共に戦ってくれている小さな友達を助ける為に。どうか私に戦う力を
 併せた手から光が漏れる。懐かしい、燦々と輝くあの太陽を思わせるけど、熱くはなく月のように優しいそんな光。
 極限まで高まった光が私の服と共に弾け、そして直ぐに集まり、新たな服を形作る。
 %%極限まで高まった光が弾けたかと思うと、もう次の瞬間には私はそれまでとは違う服に着替えてました。%%
 そしてはたと気付く。私は戦える、と。
「真夏の国のプリンセス プリンセス・ルミナ 参りますっ」
 陽光を表す山吹色と月光を表す薄黄色に染まったドレスを纏い私はポーズを決めた。
 あっ、ちょっと気持ちいいかも……。
「ルミナさん?」
 ステッキを取り出したまま呆然としているサーラに、にこりと微笑み返して
「星霊よ。夏の夜の精霊よ。私に、私の友達プリティー・サーラに力を貸して」
 私はバトンを取り出し、サーラの方へ向ける。
 するとバトンの先から星型をした無数の光がサーラの方に飛んで行きました。

 ルミナさんのバトンから放たれた光はそのままあたしの持つステッキの中に引き込まれていく。
 そして、その光を吸収し終わると、今度はあたしのステッキから光が溢れ出す。
「わわっ」
 あたしが光の奔流に促されるままにステッキを振り回すと、その光はリボン状となり、あたしを包む。
 いつしかヴェールとなった光の中、ボロボロになっていたあたしのコスチュームは光の粒子へと化し、周りの光と融合しつつ新たなコスチュームを形成する。
 グローブ、ブーツ、サークレットと全てが揃うと、ヴェールが弾けて新コスチュームが明確になる。
 いつの間にか宙に浮いていたあたしは、地面に降り立ちキメっ!
「夏の夜の希望の光 プリティー・サーラ サマースターズ 1話限定特別変身♪」
 待ってましたかとばかりに《モー・ショーグン》の斧から放たれた衝撃波があたしを襲う。けど、それを難なくバク転でかわしたあたしはそのままルミナさんの横に行った。
「ルミナさんっ」
「うん」

 ルミナさんが頷くのを見留めると同時に二人別々の呪文を唱える。
「マハエル・ミレニア・クリル・リーザ! 焔河(ほのか)!!」
 それはルミナさんが唱えた太陽の精の力を借りて紅蓮の奔流を生み出す魔法。
「レーン・レボンノレ・ゴボレ・ルゼ・メボカド! 金河(きんが)!!」
 それはあたしが唱えた星の精霊の力を借りて金色の奔流を生み出す魔法。

 二人の放った赤と金の奔流は混ざり合い、衝撃波をかき消して、《モー・ショーグン》を吹き飛ばした。
「モ、モーショー」
 すっごい威力。コレはもう勝ったも当然だね♪

「ちっ、ここまでか。ここは一旦 ―― 」
 ほら、サマナだって焦ってる。
「と、ても言うと思った? 残念。今日はね、特別にもう一体用意してあるの」
「へ?」
 予想外の展開に思わずへんな声を上げたのはあたし。
「ドリーミング・デッド 来たれ、バクラム《オヨゲ・ナイト》!」
 サマナが呪文を唱えると、空中に大きな水球が現われた。
 それは、徐々に形を変え、甲冑を纏った下半身がクラゲを持つ人型魔獣となった。
「ゲ、ゲナイトォ〜」
 あたしとルミナさんとアルティオン様、そしてサマナまでもが目を疑った。
 いや、だってもう既にかなり弱ってるんだもん。

***&aname(s9){シーン9:脅威!! 融合バクラム《モー・ショーナイト》}; [#n2335663]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s8]]/[[早送り>#s10]]

 いち早く正気を取り戻したサマナが新しく現われたバクラム《オヨゲ・ナイト》に問いかける。

「《オヨゲ・ナイト》! 一体なんでそんなに弱っている?」
「ゲナイトォ〜」
「なに? 宿主の水恐怖症を増強しようとしたら、急に抵抗が強くなって逆にやられそうになった? もう少し遅かったらやばかった?」
「ゲナイトォ〜」

 それを聞いたあたし達は思わず顔を見合わせる。
 え〜と、もしかして

「元の宿主って……」
「アオちゃん?」
「っぽいな」

 そっか、アオちゃん。ちゃんと克服できたんだ。

 あたしは胸を張ってサマナに言い放った。

「さ、さくせんどおり〜♪」

 もちろん、嘘だけど。

「くっ。こ、こうなったら奥の手よ。《モー・ショーグン》! 《オヨゲ・ナイト》! 混じりあいてひとつとなれ! ユナイト・メア!! 《モー・ショーナイト》!!」

 サマナがそう叫ぶと、2体のバグラムは溶け出し霧となった。

「やばいっ!」

 アルティオン様がそう叫び、《モー・ショーグン》が溶けて出来た赤い霧に向かってナイフを投げる。
 だけど、そのナイフは何事もなかったかのように赤い霧をつき抜けてしまった

「もう遅い。もう融合は止められない」
「くっ」

 そうこうしてる間にも、赤い霧と《オヨゲ・ナイト》が溶けて出来た青い霧は上空でひとつになり、型をなしていく。
 あっと言う間に霧は《モー・ショーグン》の上半身、《オヨゲ・ナイト》の下半身 ―― 要するにクラゲ ―― を持つ新たなバクラム《モー・ショーナイト》となってしまった。 しかも、上半身に《オヨゲ・ナイト》の纏っていた甲冑みたいのを装着してるし。

「が、合体するなんてズルいっ!!」
「あら、褒めてくれてありがと」

 おもわず抗議の声を上げたけど、サマナに簡単にかわされてしまった。

 いいもん、こうなったらさっきの技で簡単にやっつけちゃうもん。
 あたしが目配せするとルミナさんもうなづく。
 二人同時に別々の呪文を唱える。

「マハエル・ミレニア・クリル ―― キャッ」
「レーノ・レボンノレ・ゴボレ ―― ウワッ」

 だけど、《モー・ショーナイト》の触手が襲ってきて詠唱は中断されてしまった。

「させない。やれ、《モー・ショーナイト》。 抵抗するまもなくメッタメタにして上げなさい」
「モーショーナイ〜」

 その掛け声を切っ掛けに《モー・ショーナイト》の触手が、斧が、衝撃波が、あたし達へ襲い掛かる。

 サマナの魔法も飛んできたから、あたし達は避けるのに精一杯でサマー・ドリーム・ストライキング(たったいま命名)を仕掛けるタイミングを貰えなかった。

「ひゃあ〜」
 《モー・ショーナイト》の猛攻撃に悲鳴をあげるあたし。
 もちろん悲鳴をあげたところでどうにかなるなんて思ってないけど、だからって
「ど、どうしろっていうのっ?!」

***&aname(s10){シーン10:力を併せて軽やかに}; [#mb2000d8]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s9]]/[[早送り>#s11]]

 その悲鳴に似たその叫びが聞こえたのか、アルティオンがサーラ達に言った。
「サーラ、ルミナ。サマナは俺に任せろっ。二人は力を併せてそいつを弱らせるんだっ」
「「はいっ!!」」
 二人同時に頷くと、互いに触手を潜り抜けて、近くに駆け寄る。そして声を掛け合い
「サーラっ!」
「ルミナさんっ♪」
 二人は弾かれるように駆けだして、《モー・ショーナイト》へと向かって行く。
 時にルミナに向かって振り下ろされた斧をサーラが蹴って太刀筋を逸らし、時にサーラに向かって飛んできた衝撃波をルミナが誘導して来た触手で防ぐ。
 そして二人同時に襲ってきた二本の触手を互いに誘導して団子結びにする。

 その足取りは、踊るように軽やかに
 互いが互いをフォローしあって
 二人の息はピタリとあって
 ものの数分後には、《モー・ショーナイト》はもつれて動けなくなっていた。

「ルミナさんっ」
「うん」
 サーラはステッキを、ルミナはバトンを掲げ、呪文を詠唱する。
「サーチス・ラーキル・サーラキス 輝ける希望の星々よ あたしに力を」
「ルナミス・エリアル・ルミナリエ 太陽と月の精霊よ 私に力を」

 そしてステッキとバトンをクロスさせ、二人で声を併せて叫んだ。
「「全ては真夏の夜の夢の如く、消え去れ悪夢! TS(ティンクルスター/トゥルーサマー)・ハーツ・レボリュート!!」」

 微妙に技名が違っていたのもなんのその。その十字から放たれたハート型の光線が《モー・ショーナイト》目掛けて一直線に飛んでいく。
 そして命中した途端
「モーショーナイ〜」
《モー・ショーナイト》は硬直し、消滅の声をあげたのだった。

***&aname(s11){シーン11:夏の日の物語}; [#qa4cb4ee]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s10]]/[[早送り>#s12]]

 夢から戻ってきた私達をアルトちゃんが出迎えてくれました。
 アルトちゃん曰く、サマナに襲われた私の体を見てくれてたそうです。

「終わったんだな?」

 アルトちゃんの質問に沙良ちゃんが答えます。

「うん。あたしとルミナさんが力を併せたんだから負けるはずないない」
「だろうな」

 追って私からアルトちゃんに質問をします。

「そっちは、サマナの方は?」
「残念ながら逃げられ……って、なんで俺に訊く?」

 つらされて答えそうになったアルトちゃんがはっとして私に問い返してきました。

「なんとなく''そう''じゃないかと思って。確か前に地球(テラ)に来た夢の使者も''そう''だったとお母様から」

 お母様から聞いた事が本当なら、先代の夢の使者である少女イーオの正体は現・夢の国の王イーウォンス王だった筈。なら、アルトちゃんの正体は夢の国の王子、アルティオン・ミステレイク・ティンクルライル、昔よく遊んだアルくんって事に。

「えっ、なになに? なにが『そう』なの?」

 沙良ちゃんのいきなりな割込み。アルトちゃん ―― いえ、アルくんが慌ててごまかします。

「な、なんでもない。なんでもないから。そ、そうだ、サーラっ、俺はルミナ姫と少し話さないといけない事があるからさっきに行って向日の相手しといてくれ。あまり待たせると心配させちまうだろ?」
「むぅ。なんか誤魔化されている気がする……。けど、わかった。じゃあ、先に行ってるね♪」

 そう言って沙良ちゃんを先に行ったのを確かめたアルくんは私に向き直り拝み倒してきました。

「ルミ姉、頼むっ! この事はアイツには、せめてサーラだけには内緒にっ!!」
「その呼び方。やっぱりアルくんなんだ」

 私は思わずぷっと噴出してしまいました。だって私をそう言うふうに呼ぶのアルくんだけだし。

「うぐ」

 私のその突っ込みに言葉を失うアルくんでした。
 アルくんなら、ちょっとぐらい意地悪しても大丈夫ね。
 あまりの必死さにちょっとからかってみたくなった私はわざとはぐらかしてみることにしました。

「う〜ん、どうしよっかなぁ」

 人差し指を口元にあて考える素振り。

「ホントに頼む! 俺に出来る事なら何でも言う事聞くから」

 あっ、なら……

「じゃあ、もう少しの間この地球(テラ)で居たいんだけど?」
「そ、そんなことでいいのかっ?! な、なら五日間、いや、今日入れて六日間ならば全然問題ないっ!!」

 大慌てで了承の意を示すアルくん。

「あと、もうひとつ」
「ひ、ひとつだけじゃなかったのかっ!?」
「ひとつだけとは言ってないよね? ア・ル・く・ん?」
「うぐぅ」

 アルトちゃんは思わず言葉を詰まらせる。

「大丈夫。安心して、コレが最後だから」
「な、なら……」

 アルくんはごくりと生唾を呑み込みました。

「じゃあ、私がいる間だけでいいから、もうちょっと女の子っぽい服を ―― 」
「却下だっ。それだけは却下だっ」

 私が全てを言い切るのも待たずに、全力で拒否するアルくん。でも、そんなに力を入れて嫌がられる物だから余計着せたくなりました。

「沙良ちゃ〜ん、実はアル ―― 」
「わかったっ、わかったから」

 ついに、アルくんが折れました。

「なにぃ〜? ルミナさぁ〜ん」
「な、なんでもない。だから気にすんなっ!!」

 遠くから、聞き返してくる沙良ちゃんと、それを一所懸命に誤魔化そうとするアルくん。なんか微笑ましいです。

「約束よ? 確か地球(テラ)には『男に二言はない』という言葉があるものね。 あっ、アルトちゃんは女の子たっけ」
「お、俺はおと ―― 」

 どうやら『男だ』と言いかけたアルトちゃんは、何かに気付きそれを止めてしまいました。
 そして恐る恐る沙良ちゃんの方を見、胸を撫で下ろしました。
 あっ、あのまま大声て叫んでいたら沙良ちゃんに気付かれてしまうからでしょうね。

「でも、何でそんなに沙良ちゃんに知られたくないの? 沙良ちゃんの着替える所とか見ちゃったから?」

 私がそう尋ねるとアルトちゃんは顔を赤くして呟きました。

「そ、そんなの……」『言えるわけない』

 その言葉の最後は、聞き取れないほど小さな声でした。でも、恥ずかしさで真っ赤にした顔が何よりも雄弁に語っている。そんな気がしました。

***&aname(s12){シーン12:またねっ♪}; [#n97d4d45]
RIGHT:[[頭出し>#top]]/[[巻き戻し>#s11]]/早送り

 ルミナさんとの楽しかった日々はあっという間に過ぎ去り、今日はルミナさんが夏の国へと帰るお別れの日。

 夜8時半を回り、あたし達は今、近所の篝神社に来ているの。
 なんでって? ルミナさんが帰るにはあたしのいる世界と、夢の国や真夏の国を繋ぐ《門》を通らなくちゃいけなくて、一番近くにある場所がここだから。
 《門》は基本的に夢の国や真夏の国から一方通行。帰るときには向こうから開けて貰わないといけない。だから来る時と違って帰る時はキチンと時間を守らないといけないの。

 神社の境内に着いて暫くの間、あたし達は賽銭箱の前に腰掛けてこの一週間の思い出話。
 サイクリングで遠くの町まで出かけた事とか、いっしょにショッピングに行ってアッちゃんにたくさんの可愛い服を着せた事とか、縁日をお揃いの浴衣で回ったこととか、いろいろ。
 でも、ホントにいろいろな話をしたんだけど、ふいにみんなして黙っちゃった。
 アッちゃんがちらりと時計を見て、境内の中央に視線を向けた。きっかけはそれだけのことなんだけど、それがどういう意味だかわかっちゃった。もうそろそろ別れの時間。
 誰か声を掛けるでも無くあたしたちは立ち上がり、境内の中央を見つめた。
 そして少しの静寂の後、見つめていた場所が淡く光り出すと、徐々に《門》の輪郭が浮かび上がり、数秒後には確かな質感を持ってそこに建っていた。

 《門》は静かに、だけど、重厚な音と共にゆっくり開いていく。
 その隙間から見える、《門》の向こう側に見えるのはルミナさんの夢で見た真夏の国。
 悪夢のように荒れては無く、バクラムに荒らされる前の生命力溢れる風景。
 そして、その真ん中に執事のような若い男の人が立っていました。

「姫様、迎えに参りました」
「お迎えありがとうございます。私の勝手で一週間も留守にしてすみませんでした」
 
 丁寧に言葉を返し、ルミナさんは《門》の向こう側へと歩いて歩いていきました。
 そして、手前で振り返り、
「夢の使者・夢刃アルト、そして夢の導き手・星杖沙良ちゃん、いえ、プリティー・サーラ。短い間でしたけどお世話になりました。とても楽しかったです」
 そう言って頭を下げる。でも、それはどこか他人行儀な、そう公園で始めてあった時の言葉使い。
 いっしょにはしゃぎ回ったルミナさんの雰囲気を感じる事はできなかった。
 やっぱりルミナさんは真夏の国のお姫様なんだ……。そう思うとちょっとショックを受けた。

「沙良ちゃん」
 なんだか寂しくなってしゅんとなっているあたしに、ルミナ姫が声を掛けてくれた。
 あたしが俯きかけていた顔を上げると、締まりかけた門の向こう側に『いつもの』ルミナさんの笑顔があって、

「またね♪」

 そう言って手を振ってくれた。
 だからあたしも

「ルミナさんっ。あたしも楽しかったよっ。また、遊びに来てねっ。待ってるからっ!」

 大きな声でそう返したの。

 言い切った時にはとは締まっちゃってたけど……

「ルミナさんにちゃんと伝わったかな?」
「大丈夫。伝わったさ」
「また、来てくれるかな」
「来てくれるさ、ルミナ姫も『またね』って言ってただろ? 再会の約束したんだ。きっと会えるさ」

 あたしとアッちゃんはそのまましばらくお母さんが迎えに来る約束の時間まで、からっと晴れ渡った夏の夜空を仰いでいた……


CENTER:'''〜 終わり 〜'''
----

トップ   差分 バックアップ リロード   一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS