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ザ・ゴールデンロード 0B

作:きりか進ノ介


炎児と私の時間はあっという間に流れて。
一学期の期末試験も終わり、試験休み中のある日のこと。


「ツバサ、夏休みはどうするの?」

漫才研究会の部室代わりに使っている炎児のクラスの教室で、汗を拭きながら炎児が聞いた。
当然、教室にクーラーなんかない。 ワンステージ稽古すれば、二人とも汗だくだ。
緑が多くて標高が高いぶん大阪よりはるかにマシだとはいえ、やっぱり夏は暑い。

「どうするって、学校、休むで?」
「ええっ休むの?」
「あんたは出てくるんかいっ!」
「いや休むけど、ってそんなことを聞いてるんじゃないって。」

私たちの会話は、普段からずっとこんな感じ。

「んー、別に予定はあらへんかな。」
「大阪には帰らないの?」
「帰れへん。」

これは即答。 大阪に私の帰る場所はない。
両親は姉とともに今でも大阪に住んでるんだけど。
その辺の事情はいずれ炎児には話す時も来るだろう、でも、それは今じゃない。

「じゃあさ、合宿、しようぜ。」

……またすごいことを唐突に言い出したなあ。

「合宿って、なにすんのよ。」
「そりゃあさ、新作の開発と練習。」
「はぁ、なるほどなあ、って、普段の練習とやること変われへんやん?」
「だからさ、密度を上げるんだよ。 泊りがけで話し合えばきっとすばらしい新作が。」
「炎児ぃ?」

机に座ったまま、あごを左手に乗せて、私は首を傾けて彼を見た。
炎児は平静を装ってるけれど目が浮わついて、つまり、冗談のつもりじゃないらしい。

「で、どこでどうやって合宿するのよ?」
「えっと、が、学校……は、まずいな。」
「ふーん。 なんで?」
「え、えっと、だって声とか出ちゃったら困るじゃないか。」
「あんたは漫才の練習を黙ってする気やったんかい!」
「いや、ほら、そっちじゃなくてさ。」

なにを考えてんだか赤くなってるのを睨みつけて、私はため息をついた。

「あんたと私、二人しかおれへん部活で合宿? なにをヤラシイこと考えてんのよ。」

「……だってさぁ、ツバサ、俺たちって付き合ってるんだろ?」
そんな箱の中の子犬みたいな目で見たかて、知らん。

そうなのだ。 これが私の最近の悩みのタネ。
彼はことあるごとに、『関係の進展』を要求するのだ。
好き、付き合う、イコール、エッチがしたい、という主張らしい。
どうもその辺が、私の感覚とずれてるんやなあ。

男の子って、みんな、そんなもんなんやろか。

「付き合う、いうても順番があるやろ? なにしてもええっちゅうもんと違う。」
「順番って、どんなよ?」
「気持ちを込めて告白して、手え握って、お金貢いでやなあ。」
「お金がいるの!?」
「そらあんた、愛してるんやろ?」
「君の言う愛ってお金そのものなのかっ!?」
「……払うたらええっちゅうもんでもないで?」
「当たり前だよ、それじゃあまるっきり売春じゃないか! で、いくら?」
「だから違うって言うてるやん!」

炎児はまだ大阪弁を使えない。
まあ、中途半端にでんがなまんがな言われると、かえって耳障りだ。
だからこれでいい、これが私達のスタイルだと二人とも思っている。

「だいたい、炎児、私ら手をつないでもいーへんやんか?」
「え? でもドツキ合いはいつもやってるじゃない。」
「ドツキ合いと手をつなぐのは全然ちゃうのっ!」
「そう? たいして変わらないと思うけどなあ。 ほら。」

言うなり炎児は机の横に立って、私の手をさっと取り上げて軽く握った。

「ちょっ、なによ炎児、そんな簡単に?」
「簡単なことだよ、なんにも難しいことなんかない。」

やば、頬が熱くなってきた。
そんなんちゃうねん、ドキドキする事なんかなんもあらへんやんな。
ドツキ合いと一緒、ドツキ合いと一緒。
呪文を繰り返す私に、彼はあっけらかんと言った。

「そう、簡単なことさ。 だから、ツバサ、キスしよう。」

そんなことサラッと言うなあっ!
というのを押しとどめて、とりあえずボケてみる。

「あー、キスな、てんぷらにしたらおいしいのな。」
「そうかな俺は塩焼きの方が、って魚の話じゃなくって。」
「あ、お肉の方が良かった?」
「あ、そりゃ肉の方がいいや、ってだからそうでもなくてっ!」
ばんっ、と机をたたいて、私の顔をじっと覗き込む彼。

「やっぱりいや……やん!」
語尾があやしくなったのは、強引に肩を抱かれたからだ。
両の手のひらを炎児の胸に押し当てて突き放すように力を入れ、抵抗の意思表示。
ううっ、炎児の腕の熱さを肩のあたりにじんじんと感じる。

静まり返る、ふたりきりの教室。
あ、黒板の日付が試験の日のままや、となんとなく思った。

って、そんな落ち着いてるばあいと違うねんって!
どうしようどうしよう。

「……炎児。 無理やりしたら減点やで?」
「いつまで待てばいいんだよ?」
「いつまで、って、そらそのうち。」
「俺が待ってたら、ツバサはいつまでたっても近付いて来ないじゃないか。」
「そんなこと、あらへんって。 あんな、そういうムードってあるやん?」

なんとかはぐらかそうとする私を、でも炎児は放してくれなかった。

「ツバサは、俺のことを、どう思ってるの?」
だからそういうことを真剣な目で直球で聞くなっちゅうねん。 困るやんか。

「な、炎児、とりあえず離して、それから。」
「いやだ。」

ごく近く感じる、彼の息。
どきどきどき、心臓の音が聞こえたらどうしよう。
私の息、クサかったらいやだなあ。

「もし、俺のことを好きだと思うなら、目をつぶって。」

追い詰められた。 えーん。
どうしようどうしようどうしようどうしよう。



結局。 私は、目を閉じなかった。
その代わり、おもいっきり突き放しもしなかった。
どうしてかというと、それは、その、……どうすればいいのか分からなかった、のかも。

私は炎児に抱き寄せられたまま、しばらく固まっていた。

後で冷静に思い返せば、1分にも満たないくらいの短い時間だ。
でも私はそんなの数えているような余裕はなくって、1時間以上も経ったように感じられた。
どっちでも、どないでもええからなんとかしてっ、もう心臓がもてへん、と思ったとき。

ふっと、肩の束縛が解けた。

「分かったよ。 ごめん。」
私を放した炎児は、ぷい、と炎児は窓のほうへ立ってしまった。
……なにも、言えなかった。 心臓が、まだバクバクドキドキしている。

「結局、俺のひとりよがりだったってわけだ。」
吐き捨てるように言われた。
う、言われてもしょうがないかもしれない、でもそれは違う。

「違う、ちゃうねんって、炎児。」
「なにがさ。 いいよ別に、これくらいで諦めないからさ。」
「せやから好きと違うわけやないねんて。 ごめんな。」

窓を背に振り向いた彼、その目に、私は炎のかけらを見て取った。

「ツバサ。 俺が聞きたいのは、謝罪の言葉じゃない。」
強い口調で。 挑むような眼差しで。

「好きと違うわけやない、ってなんだよ。 俺は、君が、好きだ。 君は一体、俺のことをどう思ってるの?」

私は。
炎児のことを。
えっと。


「……分かれへん。」


がくぅ、っと炎児はずっこけて、そのまましゃがみ込んでしまった。

でも、正直、私自身にもよく分からないのだ。
炎児のことは好きや、と思う。 でも愛してるっていうのはちょっと違う。
違うって、なにが、どう違うんやろ? なんか自分でも整理できてへんなあ。

「炎児。 私はな、あんたと一緒におるのは楽しいねん。」

炎児はふてくされたように座り込んで、黙って聞いている。

「だから、好きか嫌いかっちゅうたら、好きやで?
 でもな、なんちゅうんかな、アレやん。
 そういうイヤラシイことがしたくて炎児と一緒にいるんと違うような気ぃがすんねん。」

「だから、結局、君は俺のことを愛してないんだよ。」

うわぁ、どこの恋愛小説の台詞や。

「ほんとに愛し合う、って、やっぱり相手のすべてが欲しいんだと思う。
 俺はツバサを愛してるとはっきり言える、だから君が欲しい。
 好きな子を目の前にして手も出しちゃいけない、なんて、そんなの拷問だよ。」

拷問。 そんなふうに考えたことはなかったなあ。

「ほな、私、あんたの前に顔を出さん方がええ?」
「どうしてそうなるんだよ、だいたい君はそれでいいの?」
「炎児がその方がええんやったら私は我慢するで?」
「ふうん、我慢できるんだ。 俺は嫌だけどな。」
「相手のことが好きやっていうことは、自分のことが我慢できるっちゅうことやろ?」
「それでお互いに我慢ばっかりして、付き合いが続くと思うの?」

……せやなあ。 続けへんかもしれへん。 それはそうやねんけど。



「ま。いいや。 俺もあせり過ぎたかも知れない。」

黙り込んだ私から目をそらして、炎児は立ち上がった。
夏の緑をいっぱいに含んだ爽やかな風が、ほこりっぽい教室に涼を送り込む。
見慣れたまぶしい窓の外をすこし眺めて、炎児は目を私に戻した。

「自転車をね、作ろうと思うんだ、君の。」
また唐突に話題を変えたなあ。

「私の? って、もうあるで?」
「うん、でももっとずっと軽くて、坂道も楽に越えて行けるやつをさ。」
炎児は教室の屋根の向こう、遠い空を見上げた。

「君にぴったりの格好いいフレームを見つけたんだ。 たった8000円でさ。」
「……なんか、やっすいなあ。」
「安いでしょ? オークションって凄いよね。」
「でもフレームって骨だけやろ? 部品とか付けたら高うならへん?」
「4〜5万円、くらいかな。」
「そんな高いの乗られへんよ、私。」
「乗れるさ。 誕生日のプレゼントにするつもりなんだ。」
「うわぁおおきにありがとう、って、せやからそんな高いもん貰われへんって!!」
「だからさ。」
きらっ、と瞳を輝かせた。よかった、ちょっと機嫌は直ったみたいだ。

「バイト、しようよ、ふたりで。 きっと楽しい夏休みになるよ。」

いよいよ夏休み。
阿蘇のカルデラは九州でも有数の観光地だ、近くのペンションなんかにも沢山の人が訪れる。
そういった施設で、ちょっとした雑用を主とした求人はたくさんあること。
近くの数件をまとめて掛け持ちする提案で、二人分の仕事を見つけてきたこと。
炎児は手短にそういった事情を話した。

「それで夏休みの終わりに二人で合宿に行けたらいいなあ、と思ったんだけどさ。」
「……自分、あいかわらず強引やなあ。」
「俺? そうか?」
「だって。」
私は笑いながら言った。 不快ではない、むしろ段取りがいいのは心地よい。
ただあまりにも先走り過ぎてるようには思う、合宿まで行く気には到底ならないけれど。

「私の夏休みの予定も聞けへんうちから、自転車、オークションで落としてるんやろ?」
「……ああ。」
「私が大阪へ帰るって言うたらどうするつもりやったんな。」
「いや、それはそれで、また別の機会にプレゼントするし、自分で使ってもいいし。」
「って言うか、私が断る可能性なんか考えてもいーへんのと違う?」
「まさか!」

おや、きっぱり否定した。

「ツバサ、君は、やっぱり俺の事を分かってない。」
「なんでよ。」
「考えてないなんてとんでもない、いつだってドキドキしてるよ。 断られるんじゃないか、嫌われるんじゃないか、って。」
「……そのわりに何でも先走って勝手にするやんか。」
「だからさ。」

ちょっと視線を逸らせて言葉を探してから、炎児は続けた。

「断られるのは、誰だって嫌だろう?」
「ま、そらそやわな。」
「だから、俺が勝手にするんだよ。 特にツバサとの関係なんかはね。」

ついて行けなくてちょっと小首を傾げた私から、また炎児は目を逸らした。

「だって俺は、いくら断られたって負けないからさ。」


ちょ、なによ、格好つけて!
それは、確かに私は、ちょっと臆病すぎるかもしれへん。
物事を自分で決めてリードして行くとかいうタイプとは違うわな。
せやけど。

「私やって臆病ばっかりと違う、やる時はやるんやで?」
「ああ、そうだね。」

……本気にしてへんな、炎児。
なんか悔しいなあ、私ってそんなに守って貰うてばっかりか?

……。
そうかも、しれない。

出会って4ヶ月間、私は、たしかに炎児に甘えすぎてたのかも。
部活も、会う約束も、ぜんぶ炎児が手配してくれっとったような気がするし。
漫才の台本だってそう、一緒に考えるのだけど、大筋を書いてくるのは炎児の方だ。
私からなにかを仕掛ける必要なんて、まったく無かった。
会いたい、とか言ったことも無かったかもしれない。
でも、話がしたいと思た時には、いつでも炎児はそこにいた。

ということは、それだけ気を使わせてた、ということ?
炎児が私のことを想ってくれてる、その気持ちにそれだけ甘えていた、と。

なんちゅうか、こう。
嬉しいっちゅうか腹立たしいっちゅうか恥ずかしいっちゅうか。

「なんか失礼やな、自分。」
ちょっと恨みがましく言ってやった。

「失礼、って何がだよ?」
「だって、そら私はなんもせえへんように見えるのかも知れへんけど。
 せやからって全部、炎児の力だけで解決できるみたいな言い方せんでもええやんか?
 いちおう付き合うてるんやろ、私やってこれでもいろいろ考えてるんやで?」

「うん、ツバサはよくやってくれてると思うよ。」
これでよくやってるんやったら、つまり私はなんもせんでええわけや。
そういう言い方が失礼やっちゅうのが、なんで分かれへんかなあ。
私やって、私やってあんたのこと……。

「起立!」
私の突然の号令に、炎児は反応できなかった。

「北原2等兵、上官侮辱により懲罰に処す!」
「なんだよ唐突に、って君が上官なの!?」
「なんでもええのっ! 気を付け、目をつぶって歯を食いしばれっ!!」

炎児は訝しげな表情でしばし私の顔を見ていたが、それでもまっすぐ前を向いて、しっかり目を閉じた。
私はつかつかっと彼の真っ正面に歩み寄って。

ええやんな。
気の迷いとは違うやんな、私から距離を詰めることも、大事やんな。

背筋を伸ばして、手を腰の後ろに組んだ。
つばを一つ飲み込んでから、息を止めた。
つま先で立って、顔の高さをあわせて、そして。

早いエイトビートで踊る、鼓動。
手のひらにじっとり、にじむ汗。

そぉっと。
くちびるの触れ合う、やわらかい感触。


そしてすぐに踵を下ろして、手を後ろに組んだまま距離を取る。
うわ、自分でも顔が真っ赤になってるのがよく分かる。

炎児が目をあけた。 信じられない、と言った表情で目を丸くしている。
あはは、ちょっとだけかわいいかも、って言うたら怒るやろな。

「あの、ツバサ、今の、もしかして。」
「言うたやろ。 私かって、やる時はやんねんで。」

炎児の顔も、みるみる赤くなる。 ざまあみろ。

「でも、ツバサも、ムードってものがまるっきり分かってないよな。」
「な、何よ、なんでここまでさせられて、そんなこと言われなあかんのよ!」
「いやだって、俺にも心の準備ってものが。」
「男のくせになに繊細なこと言うてんの、それぐらいいつでも覚悟しとってよ。」
「だってさ。」

言いかけて、炎児は形にしかけた言葉を崩した。
口喧嘩では私に勝たれへんのを、やっと思い出したらしい。
代わりに彼が口にしたのは、別の提案。

「あのさ、じゃあ、もう一回、今度はゆっくり味わうからさ。」

ア、アホ言いないな、そんな何回もチュウチュウチュウチュウ出来へんわ。
今の一回やって、どれだけ勇気が要ったと思ってるんや!

だから、私は炎児に言ってやった。
「じゃあね、もう一回、目ぇつぶって。」

彼は素直に目を閉じて、唇を突き出した。
ふふふ、結構おもしろい顔してるなあ。
私は笑いをこらえつつ、右手を大きく振りかぶって。

ぱっちーん。
うわ、思ったよりええ音がした。
私が彼の頬ををひっぱたいたのだ。
いや、もちろん手加減はした、というか軽く振ったつもりだったのだけれど。

炎児はそれこそ何が起きたのか分からなかったらしい。
目と口をまん丸に見開いて、私の顔から目が放せなかった。
……鳩が豆鉄砲を食らったような顔って、私、初めて見たかもしれへん。

「どうしてだよっ?」
「そんな恥ずかしいこと、何回も何回も出来へんよ!」
「は、恥ずかしいことなのか?」
「学校でこんな事するのが、あんたには何でもないんかいな!?」
「俺はツバサとだったら、いつでもどこでもどうにでも。」
「変態っ! ただ単ににイヤラシイだけやんか!」
「イヤラシイって言われてもさ、男ってそういうもんだぜ?」
「私、そんな男の人はイヤやもんっ! やっ、ちょっと何するんよっ!?」

半ば強引に、炎児は私の手を取って引き寄せ、ふたたび肩に手を。
そして。
今度は両手で、ぎゅっ、と抱きしめられた。

「ツバサ。」
「くっ苦しいって、何すんのよ!」

だけど、炎児は離してくれなかった。 それどころか、ますます力を入れて抱きしめられた。

……暖かい。

なんだか、ほっとするような感じ、って、違う、そんな筈はあらへん。
さっきのは大サービスやん、私はそんなことにまだ興味はあらへんねんて。

「いやっ、ちょっ、ちょっと!」
む、胸が当たってるしっ!

「ツバサ。」
炎児の声は、とても強くて優しくて。
なんだか、すっかり身を任せて安心しきってしまいそうで。
あかんねん、こんなところで安心しとったら何をされるか……

んっ、暑い、頭がぼうっとする。
やん、ちょっ、力が入れへんやん。

……だめ。
抵抗できない。

彼に抵抗できないんじゃない、多分、私の気持ちに抗えない。

いつからなんだろう。

炎児のこと、私は、実は好きなのかもしれなくって。
もっともっと、彼と近付きたいなんて欲望も、抱いていたのかもしれなくって。
こんな日が来るのを、本当は待っていたのかもしれなくって。

もしかしたら、今、とっても幸せな気分なのかもしれなくって。

「ツバサ。 愛してるよ。」

至近距離で目を合わせて、真剣な彼を、もう拒絶することなんて出来なくって。
私は、そっとうなずき返した。

そして、ゆっくりと、今度は目を閉じた。




あとがき

 むかしむかし、私がまだ大阪弁しか話せなかった頃のこと。関東出身の友人にこんなことを言われました。

「きりかってさあ、他人の意見をとりあえず否定するヤツだよな」

 驚きました。本人に否定してるつもりは全くありませんでしたから。んー言われてみると確かに否定文が多いかもしれない。でもきっと、それも方言のうちだと思うのです。もちろん個人差も地域差もあるのでしょうが、相手の意見に相槌を打つのに「そうや、その通りやなあ」って素直に言うことは私の周りではあんまりなくて、話を熱心に聞いている時ほど否定するように思います。相手の意見を認めた上で、そうそう同じようなことでこういうふうな表現も出来るよね、というような意味合いで、でもやっぱり出だしは「ちゃうねん」か「そうやなくて」か「なんでやねん」か、まあ何にせよ否定文が来るように思うんですよね。
 でもその時はうまく説明できなくて、とりあえず私は言いました。

「ちゃうねん」

 ……アホちゃうか。何を注意されてるのか分かってへんやろお前。

 今作においては、ツバサはひたすら「否定形」の少女にしてます。セリフの数だけ(は大袈裟ですが)否定文がある、地の文もあるからいったいいくつあるのか筆者も数える気力はありません。そこに大阪の香りを感じて頂ければちょっと嬉しかったりするのですが。

 さて、次回からは少年少女文庫への投稿です。がんばるぞーっと。



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